診療支援
治療

尿素サイクル異常症
urea cycle disorder(UCD)
中村公俊
(熊本大学大学院小児科学・教授)

●病態

・尿素サイクルはアンモニアから尿素を産生する経路であり,尿素サイクル異常症では,この経路の酵素欠損によって高アンモニア血症をきたし,重篤な神経症状を呈する.

・オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症はX連鎖性遺伝形式であり,その他は常染色体劣性遺伝形式である.

・日本先天代謝異常学会編集の「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」が出版されている.

●治療方針

 a)急性期にはまず絶食とし,薬物療法によるアンモニアの低下を行う.蛋白異化を抑制するため10%グルコース輸液,もしくはPI,CVカテーテルを用いた高濃度輸液(60~100kcal/kg/日)を行う.24~48時間を超える絶食は異化を亢進させ高アンモニア血症を増悪させるので,48時間以内に必須アミノ酸(0.1~0.3g/kg/日)補充を開始する.

Px処方例 下記を併用する.

アルギU注 1回100~250mg/kg 1~2時間で点滴静注.その後同量を24時間持続投与

ブフェニール錠・顆粒 1日200~300mg/kg(成分量として) 1日3回に分けて

安息香酸ナトリウム 1回100~250mg/kg 内服または静注(院内調製)

 疾患特異的な治療として以下のものがある.

 b)OTC欠損症,カルバミルリン酸合成酵素I(CPSI)欠損症に対しては下記を用いる.

Px処方例

シトルリン 1日100~250mg/kg

 c)N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症に対しては下記を用いる.

Px処方例

カーバグル分散錠 1日100~250mg/kg

 2018年8月時点まで,国内でのNAGS欠損症の報告はない.

 ブフェニールの初期投与量は,添付文書とは異なり200~300mg/kg/日程度とする(適正使用情報を参照).シトルリンは食品として扱われているので,サプリメント,日本先天代謝異常学会からの供給な

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