診療支援
治療

ゴナドトロピン依存性思春期早発症(GnRH依存性思春期早発症,中枢性思春期早発症)
gonadotropin-dependent precocious puberty
井澤雅子
(あいち小児保健医療総合センター内分泌代謝科)

治療のポイント

・男児例,6歳未満の女児例では,器質的要因がある可能性が高いため,頭部MRIによる検索を行う.

・症例ごとに治療目的と適応を検討する.診断される全例が治療適応とはならない.

・非進行性,緩徐進行性の例では,無治療でも問題ない経過をとる可能性がある.3~6か月の経過観察により症状の進行性を確認し,治療適応を検討する.

●病態

・通常の思春期でみられる視床下部-下垂体-性腺の成熟が早期に生じることにより,低年齢で二次性徴が出現する.

・「中枢性思春期早発症の診断の手引き」(平成15年度版,厚生労働省研究班)を参考に,二次性徴出現時期(<7.5歳の乳房発育,<10.5歳の初経,<9歳の精巣,陰茎,陰嚢発育など)や成長加速,骨年齢促進,ゴナドトロピン,性ホルモン分泌亢進により診断する.

・6~8歳で診断される特発性女児例が大部分を占める.男児の発症頻度は女児の約1/8と少なく,さらに特発性の占める割合も低いため,原因となる器質的病変の検索が特に重要である.

・視床下部過誤腫は,器質的要因として男女ともに頻度が高い.3歳未満で発症することが多く,てんかん(笑い発作)を伴うことがある.その他,頭蓋内腫瘍や中枢神経系の奇形・障害(水頭症,髄膜炎,放射線照射など)が要因となりうる.6歳以降に発症する例では,器質的要因を伴う可能性は低い.

●治療方針

 徐放化され半減期の長いGnRHアナログ製剤を用いる.GnRH受容体に親和性の高いアナログ製剤を反復投与することにより,内因性の脈動的GnRH分泌が抑制され,LH/FSH(黄体形成ホルモン/卵胞刺激ホルモン)分泌が抑制される.ただし初回投与時にはLH/FSH分泌を刺激するため,一時的な症状の進行や性器出血を認めることがある.

A.治療適応

 治療の目的は,低年齢での二次性徴発来に伴う心理社会的問題の改善と最終身長の改善である.診断基準を満たしても,この

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