●病態
・基本病態は,インスリン抵抗性とインスリン分泌低下によるインスリン作用不全に基づく慢性の高血糖である.
・80%以上は肥満児であり,インスリン抵抗性が主な病態である.
・主に学校糖尿病検診で発見され,10万人あたり3人程度である.80%以上が中学生以降であり,半数以上は2型糖尿病の家族歴があり,肥満傾向は男子に強い.
●治療方針
治療の基本は,食事療法や運動療法によって肥満およびインスリン抵抗性を改善させ,血糖コントロールを改善することである.薬物療法にはメトホルミンなどインスリン抵抗性改善薬を使用すべきである.ただし糖毒性がある場合は,インスリン治療をする.
A.初診時,空腹時血糖200mg/dL未満の場合
経口糖負荷試験を行い,インスリン抵抗性とインスリン分泌能を評価する.まず食事療法,運動療法を行う.
HbA1c≧6.5%が持続する場合,メトホルミン(メトグルコ)500mgを開始する.その際,下痢症状を予防するために整腸薬(ビオスリー)を併用する.
HbA1c<6.5%になるように,メトホルミンを2~4週間ごとに250mgずつ増量する.最大使用量は2,000mgである.
Px処方例 下記を併用する.
メトホルミンのみでHbA1c<6.5%を達成しない場合は,インスリン療法を検討する.特にインスリン分泌低下がある症例では積極的に検討する.
B.初診時,空腹時血糖200mg/dL以上の場合
糖毒性の解除を目的に強化インスリン療法を行う.またメトホルミンも併用する.食後血糖が200mg/dL程度に低下したら,徐々にインスリンを減量する.1か月程度でインスリン療法を中止できる場合が多い.その後は食事療法や運動療法,メトホルミン内服を継続しHbA1c<6.5%を維持する.
Px
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