診療支援
治療

肥満症,メタボリックシンドローム
obesity disease,metabolic syndrome
小山さとみ
(獨協医科大学小児科学・准教授)

治療のポイント

・子どもは成長段階にあるため,体重を減らすのではなく肥満度を減らすことに着目し,過剰に蓄積した内臓脂肪を減少させて肥満に伴う合併症の数や程度を減少させることを治療目標とする.

・治療の基本は食事療法,運動療法,行動療法となり,悪しき生活習慣を是正して,よき生活習慣の獲得を目指す.

・そのためには親のみでなく,祖父母を含めた家族の協力がきわめて重要となる.

●病態

・小児肥満症とは,肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,その合併が予測される場合(過剰な内臓脂肪蓄積がある)で,医学的に肥満を軽減する必要がある状態をいう.

・主な健康障害としては,高血圧,睡眠時無呼吸などの換気障害,2型糖尿病・耐糖能障害,内臓脂肪型肥満,非アルコール性脂肪性肝疾患,脂質異常症,高尿酸血症などがある.

・小児メタボリックシンドロームの診断はウエスト周囲長≧80cm(小学生では≧75cm),またはウエスト身長比≧0.5があり,血清脂質,血圧,空腹時血糖の3つの動脈硬化危険因子のうち2項目で異常を認めた場合に診断となる.

●治療方針

 肥満に伴う合併症の治療については他項を参照していただき,ここでは単純性肥満の治療について述べる.子どもは成長段階にあるため摂取エネルギーを制限して体重を減らすのではなく,肥満度を減少させることを目標とする.家族の協力を得ることが重要で,食事や運動などの生活習慣を見直し,過剰に蓄積した内臓脂肪を減少させて肥満に伴う合併症の数や程度を減少させることを目標とする.

 治療の基本は食事療法,運動療法,行動療法の3つが柱となる.

A.食事療法

 数日間の摂食状況を記録していただき,それをもとに食品の配分の是正や適量を示しながら標準の栄養所要量にしていく.ただし高度肥満の場合には,標準から5~10%減らした設定が必要なこともある.筋肉量を減らさずに体脂肪を減らすには高蛋白質,低炭水

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