診療支援
治療

糖尿病性ケトアシドーシス
diabetic ketoacidosis(DKA)
菊池信行
(横浜労災病院こどもセンター長)

●病態

・糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は,血液中のインスリンの極端な欠乏と上昇した拮抗ホルモンの作用によって,①高血糖(血糖値>200mg/dL),②高ケトン血症(β-OHBA>300μmol/L),③アシドーシス(pH<7.3またはHCO3-<15mmol/L)をきたした状態であり,緊急の対応が必要である.

●治療方針

 治療の目標は,①脱水の補正,②アシドーシス・ケトーシスの正常化,③血糖値を正常域に近づける,④治療の合併症を避ける,⑤急変の同定と治療(特に脳浮腫)である.

A.輸液

 48時間以上かけて脱水の補正を計画する.ショック状態であるならば,生理食塩液10~20mL/kgを1~2時間で急速輸液する.脱水の正確な評価をするのは困難であるが,1日輸液量が年齢・体重または体表面積に基づく1日維持量の1.5倍は超えないように速度を調整する.

B.インスリン

 輸液開始1~2時間後から開始する.インスリンの静注ワンショットは行わない.速効型インスリン0.1IU/kg/時で持続注入を開始する.乳幼児などの場合には0.05IU/kg/時で開始する.

C.電解質

 診断時に低K血症が認められた場合には,輸液のK濃度を20mmol/Lで開始する.1~2時間してインスリン持続注入を開始した時には,40mmol/Lに増量する.

 低Na血症と誤診しないように,Naは高血糖時には以下の補正式で評価する.

 補正Na濃度=実測Na+{(血糖値-100)/100}×1.65

D.アシドーシスの補正

 重炭酸は原則使用しない.ショック状態でカテコールアミンの使用を考慮するような状況,蘇生が必要な生命の危機に瀕しているときのみ使用する.

E.モニター

 適切なモニタリングのために,輸液用ルートと頻回の採血に備えた採血用ルートの2本の静脈ルートを確保する.また心電図・血圧・SpO2モニターを装着する.血糖値・電解質・

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