診療支援
治療

細菌性食中毒(腸炎ビブリオ,ボツリヌス症を含む)
bacterial food-poisoning(including Vibrio parahaemolyticusClostridium botulinum
成相昭吉
(松江赤十字病院感染症科・部長)

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[感]ボツリヌス症:4類

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Ⅰ.腸炎ビブリオ

治療のポイント

・抗菌薬は不要である.

・「小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017年」(日本小児救急医学会診療ガイドライン作成委員会編)を参考に対症療法を行う.

・経口補水療法(ORT)が推奨されるが,嘔吐が持続する場合,大量の下痢で脱水を示唆する徴候が認められる場合は経静脈輸液療法を行う.

・止痢薬は使用しない.

●病態

・腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は,国内で発生する食中毒の主要原因菌の1つ.ビブリオ属に属すグラム陰性桿菌で,海水中に広く生息している.

・海水温が20℃を超える6~9月に多く発生する.

・感染型の食中毒を惹起し,感染経路は生鮮海産魚介類を介した経口感染である.

・病原因子として,耐熱性溶血毒(TDH:thermostable direct hemolysin)と耐熱性毒素関連溶血毒(TRH:TDH-related hemolysin)の2種類の蛋白質性溶血毒が知られている.

・海水内には多量の腸炎ビブリオが存在するが,食中毒を起こすのは全体の1%未満である.

・腸炎ビブリオの感染部位は小腸で,潜伏期間は12時間前後である.心窩部痛を初発症状として訴えることが多く,主症状は激しい腹痛を伴う下痢で嘔吐や発熱を伴うこともある.症状は2~3日でおさまり,予後は良好である.

●治療方針

 抗菌薬投与は不要である.下痢により脱水症状を認める場合には輸液を行う.

Ⅱ.ボツリヌス症

治療のポイント

・対症療法が中心である.

・呼吸障害をきたした場合,気道確保と人工呼吸器の装着による呼吸管理が必須となる.

・遊離毒素を中和する抗血清療法は早期投与が重要である.乾燥ボツリヌスウマ

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