診療支援
治療

RSウイルス感染症
RS virus infection
西田光宏
(浜松医療センター小児科部長・アレルギー疾患センター長)

●病態

・急性細気管支炎は2歳以下の乳幼児で,呼気性喘鳴と多呼吸や陥没呼吸などの呼吸困難を生じる下気道疾患である.RSV(respiratory syncytial virus)は急性細気管支炎の原因の70~80%を占め,発症時期は冬季に多いとされてきたが,ここ数年は高温多湿の夏季にも流行している.

・RSVは主に接触感染によって気道内に侵入後,鼻咽腔に定着し,4~6日間の潜伏期間をおいて上気道炎を発病させる.乳幼児では,RSV感染症が下気道に波及しやすく,発症から数日後に細気管支へ及ぶと,呼気性喘鳴・多呼吸・陥没呼吸などの呼吸困難,チアノーゼが出現する.

・診断には,免疫クロマトグラフィ法による迅速診断検査(抗原検出キット)で病原体診断が可能である.胸部単純X線検査では,右中葉の無気肺,air trappingによる肺野の透過性亢進,横隔膜の平坦化などを認める.

●治療方針

 年齢および疾患の重症度から,外来での経過観察または入院治療を選択する.入院治療の適応は哺乳不良,鼻翼呼吸・陥没呼吸・多呼吸などの呼吸困難,無呼吸,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)<92%の低酸素血症などであるが,12週未満の乳児は重症化しやすいので慎重な対応が必要である.

A.入院治療

1.輸液

 発熱,多呼吸,哺乳不良や嘔吐などによる脱水の補正と誤嚥防止に重要である.また胸腔内圧上昇などによる抗利尿ホルモンの増加により,抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH:syndrome of inappropriate secretion of ADH)を併発し,低Na血症を生じることもあり,必要に応じて血清・尿中Na濃度を測定し,適切な輸液を行う.

2.酸素投与・呼吸管理

 SpO2が92%以上を保つように,鼻カニューレ,フェイスマスクやヘッドボックスを用いて加湿酸素を投与する.酸素吸入で,呼吸障害が改善しない場合は,

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