診療支援
治療

ニューモシスチス肺炎
pneumocystis pneumonia(PCP)
福島啓太郎
(獨協医科大学小児科学・講師)

●病態

・ニューモシスチス肺炎(PCP)は真菌の一種であるPneumocystis jiroveciiによる日和見感染症である.

・細胞性免疫不全が背景として重要であり,HIV患者,原発性の細胞性免疫不全症,造血幹細胞移植(HSCT)後,造血器腫瘍の治療中や副腎皮質ステロイドを長期に投与中などに発症することが多い.一方,好中球減少は発症リスクにはならない.

・主要症状は発熱,乾性咳嗽,呼吸困難で,酸素化能により重症度を評価する.

・胸部X線像で両側びまん性のすりガラス様陰影を呈する.胸部CTは有用で,典型的所見は両側性のびまん性間質影であるが,肺葉性浸潤影や多発結節影などを呈することもある.

・血液検査では,CRPの上昇のほか,LDやKL-6の高値が認められ,重症度を反映する.β-D-グルカンも高値となりやすく,補助診断に有用である.

・確定診断は気管支肺胞洗浄液あるいは誘発喀痰での検鏡で菌体の確認であるが,菌量が少ない場合にはPCR法やLAMP法などの遺伝子検査も有用である.

●治療方針

A.予防投与

 日本小児血液・がん学会の「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版」において,がん薬物療法中は全期間を通じてPCP予防を主目的としてST合剤の投与を推奨している.

 日本造血細胞移植学会の「造血細胞移植ガイドライン―真菌感染症の予防と治療」(2017年)において,同種HSCT患者ではST合剤の予防投与を推奨している.予防期間は,造血幹細胞に対する毒性を考慮して移植前に行ったのちにいったん中止し,生着後から再開して,少なくとも6か月以上かつ免疫抑制薬投与終了まで継続するのが一般的である.

 HIV母子感染児では,生後6週以降12か月までCD4陽性細胞数にかかわらずST合剤での予防投与が推奨されている.1歳以降はCD4陽性細胞数を参考に予防投与を行う.

 原発性の細胞性免疫不全症も予防投与の

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