診療支援
治療

誤嚥性肺炎
aspiration pneumonia
池田久剛
(山梨厚生病院小児科・部長)

●病態

A.病因:発症機序

・飲食物を直接誤嚥したり,鼻腔,咽頭腔への逆流を間接吸引したりして起こす肺炎のことをいう.咽頭喉頭機能が未熟な乳児では,仰臥位により咽頭腔が狭小化し,小顎症,喉頭軟化症があると咽頭鼻逆流が顕著となる.

・神経・筋疾患や重症心身障害児では,嚥下協調運動障害を認め,咳嗽反射が低下し直接誤嚥しやすい.また長期仰臥位臥床による舌根沈下や胃食道逆流は,間接吸引の原因となる.

・口唇口蓋裂,喉頭裂,血管輪,気管食道瘻などの先天性器質的疾患も誤嚥の原因となる.

1.気管支閉塞

・誤嚥された異物により下気道の閉塞が起こり換気障害や無気肺を生じる.

・異物の刺激により気道炎症が起こり,気道粘膜の浮腫や分泌物が増加し,閉塞が広範囲になると換気血流不均衡が起こる.

2.化学性肺炎

・ミルクの脂肪成分や胃酸による上皮障害が早期に生じ肺胞壁に浮腫や微小出血,好中球や蛋白,フィブリンの充満が起こる.

・ガソリン,灯油,ナフタリン,塗料用シンナーなど揮発性液体を誤嚥した場合は,肺サーファクタント活性が低下し急性呼吸窮迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)に急激に進行する.

3.感染性肺炎

・防御機能が低下し2次的に細菌性肺炎が生じる.起因菌は口腔常在菌,嫌気性菌が多い.

・反復性誤嚥があり,肺炎を繰り返す場合は,肺膿疱や空洞性病変を作ることもある.

B.症状

・一般的な市中肺炎の咳,発熱,呼吸困難などの症状に,誤吸引した異物による下気道狭窄,粘膜の腫脹,気道分泌物の増加による喘鳴を伴う.

・長引く咳,喘鳴,繰り返す肺炎の場合は慢性的な誤嚥を疑う.

C.診断

・原因を特定するために詳細な病歴聴取,聴診所見,胸部単純X線画像,CT,嚥下造影・食道・胃造影検査,24時間pHモニタリング,胃食道シンチグラフィー,食道内圧検査,喉頭ファイバー検査などで精査する.

●治療

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