●病態
・筋や神経の異常により横隔膜の緊張が低下し,横隔膜全体が挙上した状態をいう.原因は先天性と後天性に分類される.
・先天性の場合は比較的まれで,胎生8~12週頃の胸腹裂孔膜の発達が不十分なために,横隔膜全体あるいは一部が胸腔に向かって挙上する.また,胎児期のウイルス感染による神経炎に起因するとされ,出生前診断の報告もある.
・後天性の場合は頻度が高く,分娩外傷や先天性心疾患手術時の横隔神経損傷によるものが多い.
・先天性および後天性ともに男児に多く,左側に発生しやすいが,両側性に発生するものもある.また横隔膜全体が挙上することが多いが,部分的に挙上することもある.
・用語として横隔膜挙上症(eventration of the diaphragm),横隔膜弛緩症(relaxation of diaphragm)が混在するが,明確には区別されていない.
A.症状
・横隔膜の奇異性運動による換気障害のため,新生児・乳児期の多くは呼吸障害を呈する.また,哺乳力低下による体重減少や反復性気道感染を認めることもある.
・乳児期以降では消化器症状が主となるが,無症状例も少なくない.
B.診断
・胸部単純X線写真で患側横隔膜の挙上を認めた場合,本症を疑いX線透視下やエコー下で横隔膜の奇異性運動を確認する.横隔神経麻痺の原因検索としてCTやMRIが行われる.
●治療方針
本疾患の根治は基本的に外科手術であり,内科的治療で有用性が確認されたものはない.症状が軽度であれば無治療で経過観察とする.
分娩麻痺によるものでは高率に自然回復する可能性があるので,保存的に経過観察を行う.
呼吸障害が持続する場合や,上気道感染を反復する場合は手術適応となる.また,無症状でも肺換気/血流シンチグラフィーにより肺機能障害を認められる場合,挙上容積の大きい場合も手術適応となる.
手術は経胸的あるいは経腹的に横隔膜の弛緩部分を縫
関連リンク