診療支援
治療

唾液腺疾患
diseases of the salivary glands
河島尚志
(東京医科大学小児科・思春期科学・主任教授)

●病態

・Sjögren(シェーグレン)症候群が最も代表的疾患であり,自己免疫機序に遺伝的素因,女性ホルモン,ウイルスなどの要因などがかかわって発症する.

・Sjögren症候群は,涙腺と唾液腺の慢性炎症性疾患であり,炎症性病変が全身の外分泌腺に波及し機能障害を呈する.

・鑑別にMikulicz(ミクリッツ)病を含むIgG4関連疾患と,反復性耳下腺炎,唾石症,サルコイドーシスなどがある.

・初診時の症状は,耳下腺腫脹>乾燥症状>関節症状>発熱・Raynaud(レイノー)症状とされる.

●治療方針

 代表的疾患であるSjögren症候群の治療法を示す.口腔乾燥作用をもつ薬剤は中止し,下記の治療を選択する.

A.唾液の分泌促進として

 シュガーレスガム,レモン,梅干などを勧める.セビメリン塩酸塩(サリグレン),ピロカルピン塩酸塩(サラジェン)が唾液分泌に有効であるが,小児適応はないため慎重投与が望まれる.気管支喘息では禁忌であり,その際はブロムヘキシン(ビソルボン),漢方薬(麦門冬湯,人参養栄湯)などを用いる.副腎ステロイドは,腺組織破壊進行を抑制するというエビデンスはなく,唾液腺腫脹をくり返すときのみ使用する.

Px処方例 ➊または➋を1日1カプセル・錠から副作用に注意しながら開始する.短時間しか効果がないことから,効果が少ないときは➊または➋に➌または➍を加えて処方する.

➊サリグレンカプセル(30mg) 1回1カプセル 1日3回(成人量) 食後

➋サラジェン錠(5mg) 1回1錠 1日3回(成人量) 食後

➌ビソルボン錠(4mg) 1回1錠 1日3回(成人量) 食後

➍ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(3g/包) 1回1包 1日2回(成人量) 食後

B.唾液の補充

 唾液の補充にはサリベートや2%メチルセルロースを人工唾液として使用する.

Px処方例

サリベートエアゾール 1回1~2秒間 1日4~5回 

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