診療支援
治療

先天性食道閉鎖症,気管食道瘻
congenital esophageal atresia,tracheo-esophageal fistula
漆原直人
(静岡県立こども病院小児外科・副院長)

●病態

・食道の先天的な形成異常で,食道が盲端になったり食道と気管の間に瘻孔(気管食道瘻)を形成したりする.

・Gross(グロス)分類が広く用いられ,C型(85~90%)とA型(7~8%)がほとんどで,ほかのタイプは非常にまれである.C型食道閉鎖では上部食道は盲端に終わり,下部食道は気管と交通がみられる.A型食道閉鎖は上下食道ともに盲端となり食道と気管との交通はないが,上下食道盲端部の距離が長いlong gapのことが多い.E型(4~5%)はH型気管食道瘻とよばれ,食道閉鎖はなく気管食道瘻のみがある(図1).

・症状は出生後は泡沫状流涎,嘔吐や唾液の誤嚥と気管食道瘻による肺炎,呼吸困難などがみられる.また胃管チューブが挿入できない.Gross C,D,E型では気管食道瘻を介して胃内に空気が流入するため,腹部膨満がみられるようになる.

●治療方針

 唾液の誤嚥,気管食道瘻による肺炎,腹部膨満の予防が重要で根本的な治療法は手術である.気管食道瘻を伴った食道閉鎖では,緊急手術が必要である.

A.リスク分類

 50%以上に合併奇形がみられ,出生体重1,500g未満と重度心奇形の合併の有無で分けたSpitz(スピッツ)のリスク分類が予後を反映したものとして使用されている.

B.画像検査

 X線像で経鼻的にチューブを挿入し,食道盲端部で反転する所見(coil up)を確認する.まれではあるがB型,D型もあり,この病型が疑われる場合には水溶性造影剤をごく少量用いて口側食道の盲端造影を行う.A型,B型では気管と下部食道の交通がなく,腹部X線像で胃泡が確認できない.必ず心エコーでの心奇形の有無を評価する.

C.手術

1.C型食道閉鎖

 唾液の誤嚥と気管食道瘻を介しての胃液の肺への逆流による肺炎や,空気の胃への流入による腹部膨満を防ぐために,生後早期の外科的処置が必要である.手術には,早期に気管食道瘻切離と食道吻

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