診療支援
治療

胃食道逆流症
gastroesophageal reflux disease(GERD)
橋本卓史
(東邦大学医療センター大森病院小児科・客員講師)

●病態

・胃食道逆流(GER:gastroesophageal reflux)は胃内容物の食道への逆流と定義され,健康な小児や成人で1日に数回認められる生理的現象である.主に嚥下と関係なく一過性に下部食道括約筋が弛緩することにより起こる.

・胃食道逆流症(GERD)はGERに伴い,新生児・乳児では嘔吐,体重増加不良,喘鳴,無呼吸など,幼児・学童・思春期では嘔吐,胸やけ・腹痛,慢性咳嗽,反復性肺炎などの症状や合併症を認めるものと定義される.

・GERとGERDの鑑別は,診断により保存的に観察するか,精査や薬物療法を行うか方針が異なるため重要である.胆汁性嘔吐,吐血・下血,噴水状嘔吐などの警告徴候を有する児は,肥厚性幽門狭窄症,腸回転異常症,ミルクアレルギーなどGERD以外の疾患が疑われるため精査を考慮する.ただし吐血・下血はGERDによる逆流性食道炎でみられることがあるため鑑別が必要となる.

・GERDの診断は,上部消化管造影,食道pHモニタリング,インピーダンスpHモニタリング,食道内視鏡検査・生検などを組み合わせて行う.どれも侵襲的な検査であるため,診断と治療を並行して進める.重症心身障害児,肥満,先天性食道閉鎖症(術後),食道裂孔ヘルニア,胃軸捻転,早産児などはGERDの危険因子である.

●治療方針

 Gastroesophageal Reflux:Management Guidance for the Pediatrician(米国小児科学会,2013)では,GER,GERDの小児を,よく遭遇する発症のタイプにより以下の3群に大別し,治療方針を示している.

A.反復する嘔吐のみで合併症のない乳児例

 他疾患を示唆する警告徴候がなく嘔吐以外にGERDの症状や合併症を認めない場合は,正常な乳児の溢乳と判断し,過剰な検査や薬物療法を行わずに経過を観察する.

 授乳の途中と授乳後に計2回げっぷ

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