●病態
・胃軸捻転は支持靭帯の障害により,胃の一部あるいは全体が180度以上の回転をきたした状態.
・支持靭帯の未発達や弛緩で解剖学的異常がない特発性と,明らかな解剖学的異常がある続発性とがある.
・捻転方向は多くが前方型であるが,捻転軸によって長軸性(噴門と幽門を結ぶ軸)と短軸性(小弯と大弯を結ぶ軸)がある.
A.発症形式と症状
1.急性型
・続発性で短軸性が多く,乳児,年長児に多い.急激な嘔吐や腹部膨隆で発症し,捻転が高度で重症化しやすい.絞扼により血流障害や胃穿孔を生じる場合もある.
2.慢性型
・特発性で長軸性が多く重症化はまれで新生児,乳幼児に多い.腹部膨満,嘔吐や体重増加不良などがある.仰臥位では大弯側,幽門部が前方に位置し,ミルクは胃底部にとどまり,空気だけが幽門部・十二指腸へと流入しやすく,脱気が不十分で腸管ガスが増え,腹部膨満が生じる.
B.診断
1.腹部単純X線検査
・急性型では幽門・十二指腸の閉塞により腸管内ガスは減少し,胃が拡張する.慢性型は腸管全体のガス増加がみられる.腸管ガスの増加で胃が押し上げられたHirschsprung(ヒルシュスプルング)病などとの鑑別が必要である.両者とも立位で二重胃泡像を呈する.
2.上部消化管造影
・長軸性では大弯側が小弯側の上方に位置する(upside-down stomach).短軸性の典型例では胃底部が下がり,幽門部が噴門部より上方に位置する逆α像がみられる.急性型で絞扼性や続発性が疑われる場合には,CT検査が有用である.
●治療方針
A.特発性・慢性型
胃の支持靭帯発達による自然治癒を期待し,上体挙上,右側臥位,腹臥位による保存療法を行う.
B.続発性・急性型
胃管挿入による減圧を行う.胃管挿入が不可能,絞扼の可能性がある,減圧しても改善しない,改善しても捻転が反復するなどの場合は手術適応となる.
手術療法は,捻転整復と胃の固定が基本である