治療のポイント
・好発年齢を外れた例や年長児例では器質的病変の存在を考慮する.
・発症から長時間を経過した例では絞扼性イレウス,ショック,敗血症に至ることがあるので注意する.
・非観血的整復に造影剤を用いる場合には,バリウムは使用しない.
・非観血的整復が困難な場合には,手術の対象となる.
・イレウス,腹膜炎,ショックとなっている例では非観血的整復は行わずに緊急開腹とすべく,小児外科へ搬送する.
・診療に際しては「エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン」(日本小児救急医学会,2012)が参考となる.
●病態
・腸管が肛門側腸管の内腔に引き込まれる状態で,回腸,結腸の範囲に好発し,重積のタイプにより回腸結腸型,回腸回腸結腸型などに分類される.好発年齢は生後3か月~2歳未満で,その多くは特発性とよばれ,腸管壁内のリンパ組織〔Peyer's(パイエル)板〕の肥厚が原因と考えられる.このような例では,しばしば腸炎などの先行感染が認められる.
・一方,3~4%の症例ではMeckel(メッケル)憩室,消化管ポリープ,腸管重複症,悪性リンパ腫などの器質的病変が先進部となって腸重積の原因になる.特に年長児で発症する例では腸管壁の悪性リンパ腫が重積の原因になることがあり,注意が必要である.
・間欠的に不機嫌,啼泣,顔面蒼白などの症状を繰り返すことが特徴である.嘔吐も初発症状の1つで,高頻度に血便(イチゴジャム様)がみられる.
・発症から長時間を経過すると絞扼性イレウスに至り,致死的となりうる疾患である.
●治療方針
間欠的腹痛,血便などから腸重積症が疑われる例では,腹部の診察(右上腹部の腫瘤触知)と腹部超音波検査(target sign,pseudokidney signの確認)を施行し,すみやかな診断とともに治療を開始する.
A.非観血的整復
脱水あるいは潜在的ショック状態にあるので,あらかじめ輸液ルー