診療支援
治療

急性乳児下痢症
acute infantile diarrhea
宮崎敬士
(生駒市立病院小児科・主任部長)

治療のポイント

・脱水症の補正は,軽度~中等度では経口補水液(ORS:oral rehydration solution)を用い4時間以内に行う.重度には輸液療法を優先する.

・食事の再開は早く行い,固形食を含む年齢相当の普通食とする.母乳は継続し治療乳や希釈乳は不要である.

・制吐薬や抗菌薬は一律に使用する必要はなく,止瀉薬(ロペラミド)は原則禁忌である.

・ロタウイルスワクチンは高い予防効果,費用対効果に優れており接種を勧奨する.

●病態

・急性下痢症とは便回数が1日3回以上か通常より増加した場合,または乳児では10g/kg/日以上,幼児では200g/日以上の便量の状態.かつ72時間以内に改善し,少なくとも2週間以内に軽快するものをいう.

・下痢の発症機序を下記に示す.

 a)分泌性:細菌毒素,ホルモン産生腫瘍など

 b)浸透圧性:二次性乳糖不耐症,グルコース-ガラクトース吸収不全症など

 c)腸管蠕動異常:過敏性腸症候群,甲状腺機能亢進症,糖尿病など

 d)吸収粘膜面積の減少:短腸症候群,セリアック病など

 e)炎症性:炎症性腸疾患,細菌性腸炎など

・感染性胃腸炎の病原微生物を下記に示す.

 a)ウイルス性胃腸炎:ロタウイルス,ノロウイルス,アデノウイルス,サポウイルス,アストロウイルスが代表的

 b)細菌性腸炎:サルモネラ,キャンピロバクターの頻度が高い

・わが国では2017年に「小児急性胃腸炎診療ガイドライン」(日本小児救急医学会)が刊行された.

●治療方針

A.脱水の重症度評価

 乳児下痢症の治療においては,臨床症状を用いて患児の脱水の重症度を正しく評価することが重要(表1).

B.治療法

1.経口補水療法(ORT:oral rehydration therapy)

 中等度以下の脱水のある乳児下痢症に対する初期治療として,ORTが推奨される.症状が出現したら,嘔吐の有無にかかわらず4時間以内に喪失した

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