診療支援
治療

Hirschsprung病
Hirschsprung disease
田口智章
(福岡医療短期大学・学長)

●病態

・腸管の筋間神経叢〔Auerbach(アウエルバッハ)plexus〕および粘膜下神経叢〔Meissner(マイスナー)plexus〕の神経節細胞(ganglion cell)が先天的に欠如する疾患.そのため別名aganglionosisともよばれる.5,000出生に1例,男女比は3:1.成熟児に多い.

・神経節細胞が欠如する無神経節腸管(aganglionic segment)が肛門から連続的に存在するのが特徴で,無神経節腸管は狭小化し,そこよりも近位の正常神経節腸管が拡張する.

・新生児期からの腹部膨満,胆汁性嘔吐などの下部消化管閉塞症状で発症することが多い.生後24時間以内に胎便が排泄されない症例(胎便排泄遅延)が90%にみられる.

・無神経節腸管が全結腸以上に達する場合は,回腸閉鎖に類似する新生児イレウス症状を呈する.

・持続する頑固な便秘で乳児期以降に発見される場合も多い.まれであるが学童期や成人に達して診断されることもある.

・無神経節腸管の長さにより,S状結腸までの短域型(short segment)が約80%(classical typeやrectosigmoid typeともよばれ典型例である),それを超える長域型(long segment)約10%,全結腸型(total colonic)と小腸型(extensive)で約10%,まれであるが全腸管型(total intestinal)の病型がある.無神経節腸管が長いほど重症である.

●治療方針

A.診断のポイント

 新生児期からの腹部膨満,胆汁性嘔吐などの下部消化管閉塞症状で発症することが多い.直腸肛門指診にて指を引き抜くと多量のガスや異臭のする水様便が噴出する(explosive defecation).腸閉鎖とは異なり浣腸や排気である程度の排便排ガスはみられる.

 ただし無神経節腸管が全結腸以上に達する場合は,回腸

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