診療支援
治療

肛門周囲膿瘍
perianal abscess
豊田 茂
(野尻こどもファミリークリニック・院長(静岡))

●病態

・直腸と肛門管との接合部にある歯状線の上方は直腸円柱で,陥凹部を肛門洞という.これは下方に伸びて肛門陰窩を形成し,底部に肛門周囲腺が開口している.

・感染は主に一次口である肛門陰窩から始まり,拡大し波及する.肛門周囲膿瘍は挙筋下膿瘍の1つで皮下(二次口)に形成されたものであり,下痢などで誘発される.一方,おむつかぶれなどで表在皮膚に形成されたものは癤(せつ)と同様である.

・起炎菌は大腸菌,枯草菌,変形菌,ブドウ球菌や連鎖状球菌などで3時と9時の位置に生じやすい.

・免疫能の未熟さ,アンドロゲン過剰や解剖学的異常などの原因説がある.

・半数は2歳以下で生後6か月以内の男児に多い.再発しても1歳頃までに治癒する傾向がある.

●治療方針

 炎症の軽減に努め,感染の増悪を回避する.膿の貯留が多くなれば切開排膿する.

A.非観血的療法

 シャワーによる洗浄などで局所清潔に努め,軟膏の塗布を行う.下痢に対して整腸薬と炎症の程度により抗菌薬を投与する.自然排膿すれば,さらに自宅で2回/日ほど用手圧迫して排膿を促す.局所の免疫調整と再発や瘻孔形成の回避を目的に漢方薬も頻用され,有効率は80%以上といわれる.線維芽細胞増殖因子(FGF)を含有した局所噴霧剤は,早期に使用すると炎症抑制効果がある.

B.観血的療法

 膿の貯留が増し,波動を触れれば切開排膿を行う.一次口までゾンデを挿入することによる瘻孔開放術も勧められる.

Px処方例 下記➊➋のいずれかを用いる.局所療法として➌~➎を適宜併用する.

➊ツムラ十全大補湯エキス顆粒 1回0.1g/kg 1日2~3回(成人量1日7.5g) 食前または食間.慢性化した場合にも可

➋ツムラ排膿散及湯エキス顆粒 1回0.1g/kg 1日2~3回(成人量1日7.5g) 食前または食間.急性期の使用が望まれる

➌アズノール軟膏 1日3~4回 塗布(抗炎症作用)

➍ゲンタシン

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?