診療支援
治療

鼠径ヘルニア,臍ヘルニア
inguinal hernia,umbilical hernia
山高篤行
(順天堂大学小児外科学・主任教授)

Ⅰ.鼠径ヘルニア

●病態

・小児鼠径ヘルニアの多くは,腹膜の一部が内鼠径輪から鼠径管内へと突出し形成された腹膜鞘状突起内に,腹腔内臓器の一部が入り込んだ外鼠径ヘルニアである.

・小児外科の手術対象の疾患では最も多く,小児の1~5%にみられ,右側が60%,左側が30%,両側が10%と右側が多い.立位,啼泣など腹圧上昇の際に鼠径部が膨隆しやすく,非脱出時は触診上でシルクサイン(肥厚したヘルニア嚢と精索が触れる)を確認した場合は,鼠径ヘルニアの可能性が高い.また補助診断として超音波検査も使用できる.

・腹腔内臓器が脱出し,徒手整復できない病態を嵌頓(かんとん)とよび,腹痛,嘔吐などの腸閉塞症状を呈する.徒手整復できなければ腸管壊死などの合併も考慮し,緊急手術を行う必要がある.

●治療方針

 腹膜鞘状突起の閉鎖は1歳以降では見込めないため,麻酔のリスクや手術の難易度も考慮して,当科では1歳以降,あるいは1歳未満でも嵌頓を生じるリスクが高い症例や卵巣滑脱症例などを手術対象としている.

 小児の鼠径ヘルニア手術の原則は内鼠径輪の高さでのヘルニア嚢の単純高位結紮であり,成人鼠径ヘルニアの腹壁のメッシュ補強などは行わないのが一般的である.

 また近年では,腹腔鏡下で内鼠径輪を結紮する手術,特に腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC:laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure)は従来法より整容性に優れていること,また対側検索・修復が可能な点からも施行する施設が増加している.対側発生に関しては,従来法術後と比してLPEC術後のほうが明らかに少ないとの報告が多く,また術後鎮痛を工夫することでLPECの日帰り手術も一般的となってきた.

■患児・家族説明のポイント

・無症状であれば,自宅での経過観察でよいが,嵌頓が疑われた場合はすみやかに医療機関を受診するように伝え

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