治療のポイント
・先天性胆道拡張症は,胆管癌の発生母地であるため,全例で手術適応となる.
・無症候性の新生児や乳児の場合は,待機的に手術を行うべきである.
・手術は胆嚢を含めた肝外胆管切除+Roux-en-Y肝管空腸吻合であり,膵内胆管の完全切除を行うべきである.
・嚢胞消化管吻合(内瘻術)は禁忌である.
・術後に胆管炎や肝内結石,遺残胆管癌を合併することがあり,生涯にわたってフォローアップしていく必要がある.
・「先天性胆道拡張症診断・治療ガイドライン」を参考に診療を進めていくべきである.
●病態
・先天性胆道拡張症(CBD)は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で,膵・胆管合流異常を合併するものをいう.ただし肝内胆管の拡張を伴う例もある.CBDの発生機序は解明されていない.
・日本膵・胆管合流異常研究会によって「先天性胆道拡張症の診断基準2015」が作成され,その後,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)において「先天性胆道拡張症診断・治療ガイドライン」が作成された.
A.症状
・胆管拡張と膵・胆管合流異常により,胆汁と膵液の流出障害や相互逆流,胆道癌など,肝臓,胆道および膵臓にさまざまな病態を引き起こす.主な症状は腹痛,嘔吐,黄疸,発熱などであり,腹痛,黄疸,腹部腫瘤は三主徴といわれてきたが,すべてそろうことは少ない.
・出生前を含めて乳幼児期に発症することが多いが,成人期以降に発症する場合もある.
B.診断
・胆管拡張と膵・胆管合流異常の両者が画像または解剖学的に証明された場合になされる.ただし結石や癌などによる胆道閉塞に起因する,後天性や二次的な胆道拡張は除外する.
1.胆管拡張の診断
小児ではCBDのスクリーニングとして腹部超音波検査が有用であり,またMR胆管膵管撮影(MRCP)は胆道系全体の描出や膵・胆管合流異常を非侵襲的に診断できる.
a.胆管径 胆管径は