診療支援
治療

慢性肝内胆汁うっ滞症
intrahepatic cholestasis
徳原大介
(大阪市立大学発達小児医学・准教授)

 小児の慢性肝内胆汁うっ滞症の原因は多岐にわたるため,診断ならびに基礎疾患に応じた治療が重要である.胆汁排泄を促進するためにはウルソデオキシコール酸が,胆汁うっ滞に伴う脂溶性ビタミン不足に対して脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)の投薬が一般的に行われる.

●病態

A.シトリン欠損症

・肝細胞のミトコンドリアのシトリン蛋白の欠損により糖の利用・新生に障害をきたし,特異な食癖(炭水化物を嫌い,脂質・蛋白質を好む)を呈する.新生児・乳児期にみられる新生児肝内胆汁うっ滞(NICCD)と,思春期・成人期に発症する成人発症Ⅱ型シトルリン血症(CTLN2)の2つの病態が知られ,NICCD軽快後CTLN2発症まで見かけ上健康な時期が存在する.

・急性期には,胆汁うっ滞型肝障害に加えて血中シトルリンの上昇が認められることが多い.

・診断は遺伝子解析やWestern blot解析による.

・まず栄養療法が重要である.NICCDに対しては中鎖脂肪酸(MCT)ミルクを使用し,高ガラクトース血症がある場合には乳糖除去MCTミルク(ML-3)を用いる.

・乳幼児期は低血糖・成長の遅れに注意を払う.少なくとも3歳頃からみられる特異な食癖(米飯を嫌い,牛乳・卵・肉・大豆を好む)は矯正しない.栄養療法に加え,胆汁うっ滞型肝障害に対する治療を行う.

B.Alagille(アラジール)症候群

・小葉間胆管減少症による慢性胆汁うっ滞に肝外症状を伴う.肝臓,顔貌,心血管(例;末梢性肺動脈狭窄),眼球(例;後部胎生環),椎体(例;前方弓癒合不全)のすべてに異常がみられる場合を完全型Alagille症候群,肝臓を含めて上記の3症状を伴う場合を不完全型Alagille症候群という.

・乳児期に黄疸を契機に疑われることが多い.

・小葉間胆管減少の病理診断には6個以上の門脈域を評価する.臨床診断に加えて,JAG1遺伝子解析を行うが,既知の変

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?