Ⅰ.胆石
●病態
・小児期に診断される胆石症は,溶血性疾患(特に遺伝性球状赤血球症),膵胆管合流異常(先天性胆道拡張症),先天性心疾患術後,長期臥床,長期間にわたる絶飲食,超低出生体重児,薬剤(セフェム系抗菌薬,利尿薬),腸管(回盲部)切除後などの基礎疾患を有することが多い.
・胆石はその存在部位により胆嚢結石,胆管結石,肝内結石に分類される.またその構成成分からコレステロール結石,色素結石(黒色石とビリルビンカルシウム石)に分類される.
●治療方針
無症状の胆嚢結石は経過観察する.幼児の胆嚢結石は自然消失もありうる.胆嚢炎または胆石発作を起こす胆嚢結石は胆嚢摘出術の適応である.胆汁酸製剤(ウルソ)の適応はX線透過性コレステロール結石である.前述の基礎疾患をもつ児の結石はビリルビンカルシウム石が多く,溶解療法の適応はない.
総胆管結石は原則治療の対象となる.小児においても内視鏡的総胆管結石除去術が第1選択となる.
Px処方例
ウルソ薬錠・顆粒 1回3~5mg/kg(成分量として) 1日3回
Ⅱ.胆嚢炎
●病態
・急性胆嚢炎の原因の90~95%は胆石である.胆嚢結石が胆嚢管を閉塞し発症する.
・全身状態が悪く集中治療を要する児に発症することが多い無石胆嚢炎は,小児の急性胆嚢炎の2~15%を占める.
●治療方針
絶食および十分な補液,抗菌薬の経静脈的投与を行う.胆嚢が腫大し,疼痛が強いときはドレナージ術(経皮経肝胆嚢ドレナージまたは内視鏡的経乳頭胆嚢ドレナージ)を考慮する.
内科的治療に不応な場合は,ドレナージ術または早期の胆嚢摘出術を考慮する.胆嚢炎治療後は胆嚢摘出術を行う.
Px処方例 ➊と➋,または➌と➍をそれぞれ併用する.
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