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治療

体動脈肺動脈短絡手術の適応
indication of systemic-to-pulmonary arterial shunt
佐藤誠一
(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器内科・部長)

 体動脈肺動脈短絡(シャント)手術は,Fallot(ファロー)四徴に代表される肺血流減少群のチアノーゼ性心疾患に対し,肺血流を増加させてチアノーゼを軽減するとともに,肺血管(ひいては左心室)を成長させる目的で施行されてきた.加えて現在では,単心室など二心室修復が難しい症例などでシャントを調節して肺血流を適正化させ,房室弁逆流の増悪を防ぎつつ心不全と低酸素血症をコントロールし,肺血管の発育を促す手術の役割も担っている.

 人工血管を用いたBlalock-Taussig(ブラロック・タウシッヒ)変法(modified BT shunt)が一般的であるが,体動脈と肺動脈の位置関係さらに体格や心室様式を考慮し,短絡位置と人工血管の太さ・長さを決定する.

A.体動脈肺動脈短絡手術の適応

 a)肺動脈閉鎖/狭窄により動脈血酸素分圧<30mmHg,酸素飽和度<70%をきたす複雑心奇形で,体格や肺動脈の発育などから心内修復術が困難な症例

 b)Fallot四徴などで低酸素発作がβ遮断薬でコントロール不十分であり,一期的心内修復術が困難な症例

 c)肺動脈や左室の発育が不十分な症例.Fallot四徴の心内修復術時に左室拡張末期容積>70% of Normal,Fontan(フォンタン)型手術ではPA index(肺動脈指数)>200mm2/m2以上が目標

 d)動脈管などを介する肺血流が多すぎて,心不全症状がコントロールできず,乳児期早期に一期的な修復手術が難しい症例

B.体動脈肺動脈短絡手術の問題点

 合併症として心不全,低酸素血症,出血,感染症のほか,反回神経麻痺や横隔神経麻痺,心嚢液貯留などに留意する.

C.体動脈肺動脈短絡手術後の管理

 術後は肺血流が増加して心室容量負荷が急激に増加するため,術後急性期には強心薬投与を含めた集中治療を準備する.血栓形成によるシャント閉塞を予防する目的で,退院後も抗血小板

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