A.新生児・乳児の術後管理
先天性心疾患は心大血管の構築異常であり,外科手術は形態や構造を改変して血行動態の改善を目指すものである.術後管理には,疾患の形態や構造と手術による血行動態変化の理解が必要不可欠である.
胎児期は両心室の並列接続で体循環を維持しており,出生後の肺呼吸成立に伴い肺心室は肺循環を,体心室は体循環を担う直列接続に変化する.新生児期に発症する先天性心疾患は,この変化に対応できない心大血管構築異常が多い.また新生児の心臓は容量負荷と圧負荷に対する予備力がなく,容易に心不全を呈し破綻する.さらに肺血管抵抗の変動が大きい.
新生児乳児の術後管理では,患児がもつ心機能の範囲内で体血流と肺血流のバランスをとり,低酸素血症を軽減して体血流を維持することが重要である.
乳幼児期以降は二心室修復/Fontan(フォンタン)手術が中心となる.術後急性期の管理だけでなく,遠隔期の心機能,肝腎機能,精神運動発達にも留意が必要で,各専門分野との連携が必要となる.
B.代表的な手術後の管理
1.体肺動脈短絡手術(BT shunt,central shuntなど)
肺血流を増加しチアノーゼを軽減するが,心室の容量負荷は増大する.高肺血流による心不全に対しては,体血管抵抗の低下,肺血管抵抗の上昇,心拍出の増大を考えた管理が有効である.
2.肺動脈絞扼手術(PAB:pulmonary artery bandingなど)
肺動脈圧の低下と心室容量負荷の軽減を目的とする.一方,肺心室の圧負荷は増大し,単心室血行動態では低酸素血症が進行する.術後は肺血流と体血流のバランス変化を考えて管理する.PABのmigrationによる左右肺動脈血流差にも注意する.
3.二心室修復手術
手術により,肺血流と容量負荷の変化を考えた管理を行う.心室中隔欠損では肺血流が減少し容量負荷は軽減するが,Fallot(ファロー