診療支援
治療

心室中隔欠損
ventricular septal defect(VSD)
宮本朋幸
(横須賀市立うわまち病院小児医療センター・センター長(神奈川))

●病態

・欠損孔を通しての左右短絡が主病態.欠損孔が大きいと肺血流が増加し,心臓の仕事量の増加および体血流量の低下をきたす.また肺うっ血により呼吸器症状も呈する.さらに肺血流の増加は肺高血圧も進行させる.

●治療方針

 肺血流増加に伴う呼吸・循環障害を軽減する内科的治療を行いながら手術適応を見極める必要がある.一般的に哺乳制限はしない.「飲ませてはいけない」疾患ではなく,「飲めなくなる」疾患であることを念頭におく.

A.小欠損

 2~3mm程度の小欠損とよばれるものは特段の治療を必要としないことが多い.自然閉鎖例もあり,乳児期は3~4か月間隔での外来経過観察をして,その後1年に1回程度の経過観察で十分といえる.しかしKirklin(カークリン)分類の肺動脈弁下型(Ⅰ型)は大動脈弁右冠尖逸脱(RCCP:right coronary cusp prolapse)をきたすことがあり,経過観察中に心雑音が消失しても,心臓超音波検査でRCCPの有無を確認する必要がある.

B.中欠損以上

 胸部X線写真で肺血流拡大および心拡大を伴う場合には利尿薬の投与を考慮する.利尿薬はループ利尿薬とカリウム保持性のあるスピロノラクトンとの併用が多い.多呼吸などの呼吸症状や啼泣時の顔色不良など循環障害症状がみられる場合には,利尿薬に加えアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を投与するとよい.従来使用されてきたジギタリス製剤は,重篤な症例であるほど体肺血流比(Qp/Qs,左右短絡量の指標)が増加するとされ,現在治療薬としては推奨されていない.

C.手術適応

 乳児期は,十分な内科的治療にもかかわらず呼吸循環障害症状持続や体重増加不良の場合は,手術による欠損孔閉鎖の適応と考えてよい.しかし低体重児や他臓器疾患合併例では,肺動脈絞扼術を検討する場合もある.

 幼児・小児期は,内科的治療の有無にかかわらずQp/Qsが1.5以上

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