診療支援
治療

骨髄異形成症候群
myelodysplastic syndrome(MDS)
長谷川大輔
(聖路加国際病院小児科)

●病態

・骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の異常によって血液細胞の分化が障害され,血球減少,形態異常(異形成),芽球の出現を呈する造血器疾患であり,時に白血病化する.

・末梢血および骨髄中の芽球の多寡で予後が異なる.芽球増加を伴わないMDSの全生存率は80~90%と比較的良好であるのに対して,芽球増加を伴うMDSの全生存率は造血細胞移植(HCT:hematopoietic cell transplantation)を行っても60%前後である.

・芽球増加を伴わないMDSの一部は免疫抑制療法(IST:immunosuppressive therapy)によって造血回復が得られることから,異常クローンに対する免疫学的攻撃も病態に関与していると考えられる.

・ほかの悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法により,DNA損傷が生じることで治療関連MDSが生じうる.

・Fanconi貧血など遺伝性骨髄不全症候群を基礎疾患にMDSを発症することがある.

・詳細は日本小児血液・がん学会の「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン2016年版」および日本造血細胞移植学会の「造血細胞移植ガイドライン―骨髄異形成症候群・骨髄増殖性腫瘍(小児)第3版」を参照されたい.

●治療方針

 MDSに対して治癒が期待できる唯一の治療法はHCTであるが,芽球増加を伴わないMDSは無治療でも病期進行をきたさず血液学的に安定した状態を保つ症例が散見されるため,血球減少の程度,染色体異常の種類,移植ドナーの有無を勘案して治療方針を決定する.

 一方,芽球増加を伴うMDSおよび治療関連MDSは全例が移植適応である.遺伝性骨髄不全症候群から生じたMDSも移植の適応となるが,基礎疾患によっては移植関連毒性が強く出現するため,前処置の選択は慎重に行う必要がある.

A.芽球増加を伴わないMDS

 芽球増加を伴わないMDSのうちモノソミー7(-7)

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