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治療

Kasabach-Merritt症候群(現象)
Kasabach-Merritt syndrome(phenomenon)
百名伸之
(琉球大学病院小児科・講師)

●病態

・血管腫に伴う致死的な血小板減少性凝固異常症である.乳児血管腫にはみられず,血管系腫瘍であるカポジ型血管内皮腫(KHE:kaposiform hemangioendothelioma)あるいは房状血管腫(TA:tufted angioma)に特異的である.

・病理組織学的に血管内皮(CD31,CD34)やリンパ管(LYVE-1,PROX1,D2-40)の抗原が陽性であり,乳児血管腫で陽性となるGLUT-1は陰性である.

・病因は,腫瘍内で異常増殖する血管内皮に血小板が捕捉されることによる.捕捉された血小板は活性化され血小板に富むフィブリン血栓を形成し,次いで線溶亢進,消費性凝固障害へと進展する.局所の出血は腫瘍の急速な増大をもたらし,悪循環を形成する.

・KHEの死亡率は12~24%で,特に後腹膜原発の予後が悪い.死因は出血,敗血症,重要臓器への腫瘍浸潤であり,転移による腫瘍死はない.

・名称について,近年の英文はsyndromeではなくphenomenonを用いている.

●治療方針

 確立した治療法はないが,基本は以下に要約される.

 a)血小板輸血は腫瘍の増大をきたすため禁忌である(活動性の出血症状を除く).

 b)可能であれば外科的切除を行う.

 c)放射線は有効であるが,成長障害,発達障害,二次がんのリスクがある.

 d)薬物治療としてステロイド(プレドニン,プレドニゾロン),ビンクリスチン(オンコビン),インターフェロンα,抗血小板薬(アスピリン,パナルジン),シロリムスが有効とされる.

A.外科的切除が可能な場合

 腫瘍が小さく局所に限局している場合は根治的切除を行う.しかし腫瘍は浸潤性で凝固障害を伴っており,初発時の完全切除は困難であることが多い.血管塞栓術が有効な場合もある.

B.外科的切除が不可能な場合

1.放射線照射

 前述した理由から初回治療では行わない.特に乳児では避けるべ

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