診療支援
治療

腎炎・ネフローゼ患児への日常生活の管理と指導
management of children with chronic glomerulonephritis and nephrotic syndrome
郭 義胤
(福岡市立こども病院腎疾患科・科長)

●病態

・腎炎:腎糸球体・間質の炎症により血尿・蛋白尿・腎機能障害などの症状を引き起こす.

・ネフローゼ:糸球体からの大量の蛋白漏出により低蛋白血症を生じ,浮腫などの症状を引き起こす.

●治療方針

 腎炎・ネフローゼの治療・管理は長期にわたり,患児や家族に与える影響が大きい.現在の病状だけでなく,患児の将来を見据えた指導が重要である.病状が安定してれば強い生活制限は不要で,過剰な制限が心理的・社会的成長を阻害し,社会的不適合を生み出さぬ配慮が必要である.また社会からの疎外感を感じがちな家族への支援も忘れてはならない.

A.運動

 わが国では学校保健会が示す「学校生活管理指導表」に基づいて指導が行われてきたが,従来は過剰な制限が行われ患児の生活の質が大きく損なわれていた.しかし腎炎・ネフローゼの慢性期における運動負荷がその長期予後に負の影響を与えるというエビデンスはなく,過剰な制限は肥満やステロイド性骨粗鬆症を招き,さらに運動嫌いや内向的な性格など心理的問題を引き起こし弊害が大きい.2011年度に「指導区分の目安」が改訂され,尿異常が軽微な場合やステロイド投与中の場合でも原則として運動制限は行わなくなった(表1).体育授業や遠足などの学校行事への参加を積極的に促し,運動部への入部も許可する.

1.急性腎炎症候群

 以前の区分では3か月以上経過してもわずかでも血尿が残っていれば運動を制限していたが,現在では蛋白尿が(+)程度以下であれば制限しない.

2.慢性腎炎症候群

 蛋白尿が(+)程度以下あるいは血尿のみであれば運動制限は行わない.「指導区分の目安」では蛋白尿(++)以上の場合に運動制限を行うとされているが,実際に制限を行う場合には小児腎臓専門医へ相談したほうがよい.

3.ネフローゼ

 ステロイド投与中でも病状が安定していれば原則として運動制限は行わず,(++)以上の蛋白尿でも状態が安定してれば

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