治療のポイント
・乳幼児の尿路感染症の症状は非特異的であるため,尿路感染症を疑うことが大切である.
・バッグ採尿での尿検査の結果は,偽陽性も偽陰性も高く診断的意義は少ないため,カテーテル採尿を行う.
・桿菌にはセフェム系抗菌薬,球菌にはペニシリン系抗菌薬を選択する.
・尿路感染を反復する場合,起因菌が大腸菌以外で,超音波で異常所見がある場合は,膀胱尿管逆流の検索を行う.
・高度膀胱尿管逆流を有する乳幼児に対しては,抗菌薬の予防内服を行う.
●病態
・尿路感染症(UTI)は,尿路に細菌などの病原体が侵入し感染を起こす病態である.小児UTIは腎・尿管に感染し発熱を伴う上部UTI(急性腎盂腎炎)と膀胱・尿道に感染をきたすが発熱を伴わない下部UTI(膀胱炎,尿道炎)に大別される.臨床的に問題となるのは,腎実質傷害をきたす可能性のある上部UTIである.
・乳幼児は基礎疾患(膀胱尿管逆流,水腎症など)を有する複雑性UTIが多い.また,低形成・異形成腎の合併していることが多く,その場合は将来の腎機能低下に留意し経過観察が必要となる.また,近年UTIの反復と排尿・排便習慣の異常が注目されている.
●治療方針
A.診断
乳幼児のUTIは,症状が非特異的(発熱のみが多い)で見逃しが生じる.特に上部UTIは診断が遅れると腎の瘢痕化が生じ将来,腎不全に至る可能性があるため,発熱の原因が不明である場合は,積極的に尿検査を行う必要がある.しかし乳幼児に一般的に行われている,採尿バッグによる採尿は不適切である(偽陽性率7.5%,偽陰性率29%)ため,カテーテル採尿を推奨する.また膿尿を認めないUTIが10~20%存在するため,膿尿をもってUTIと診断すべきではない.UTIの確定診断は,尿細菌培養で有意な細菌尿(中間尿>105/mL,カテーテル尿>5×104/mL)を証明する.
乳幼児の上部UTIは,膀胱尿管逆流が30~40
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/セフトリアキソンナトリウム水和物《ロセフィン》
- 治療薬マニュアル2024/セフジトレン ピボキシル《メイアクトMS》
- 治療薬マニュアル2024/アンピシリン水和物《ビクシリン》
- 治療薬マニュアル2024/アモキシシリン水和物《サワシリン パセトシン ワイドシリン》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)《バクタ バクトラミン》
- 治療薬マニュアル2024/セファクロル《ケフラール》
- 新臨床内科学 第10版/1 急性腎盂腎炎,慢性腎盂腎炎
- 今日の治療指針2023年版/腎・尿管結石
- 新臨床内科学 第10版/【1】尿路結石
- 今日の治療指針2023年版/小児の尿路感染症
- 今日の診断指針 第8版/膿尿・細菌尿
- 今日の診断指針 第8版/急性腎盂腎炎・慢性腎盂腎炎
- 今日の診断指針 第8版/膀胱炎・腎盂腎炎
- 今日の診断指針 第8版/腎・尿管結石
- 今日の診断指針 第8版/小児の尿路感染症