●病態
・超音波検査やCT検査により容易に診断できる.単発性から多発性までさまざまで,多発性で家族歴のあるものは遺伝性疾患の可能性がある.
・常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD:autosomal dominant PKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD:autosomal recessive PKD)については「エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017」が刊行されている.
●治療方針
A.単純性腎嚢胞
腎実質に生じた嚢胞である.悪性所見(嚢胞の壁不整,不均一な内部構造など)や臨床症状(高血圧,尿管や腎被膜の圧排に伴う水腎症や腹痛)がなければ経過観察する.
B.多嚢胞性異形成腎(MCDK:multicystic dysplastic kidney)
発生過程において正常なネフロンが構築されず多発性嚢胞を生じる.無機能腎で超音波検査では大小さまざまな嚢胞を認め,嚢胞間の交通がない,腎実質がない,などの特徴を有する.腎の異形成を病理学的に証明することで確定診断されるが,必須ではない.悪性化の根拠はなく絶対的に摘出する必要はない.半数は3歳までに自然退縮し,健側が代償性に腫大する.健側に合併することがある尿管瘤や膀胱尿管逆流などの腎尿路異常があれば専門医にコンサルトする.内性器異常を合併することもあり,女児では重複子宮などのスクリーニングも行う.
C.ADPKD
PKD1遺伝子やPKD2遺伝子の異常による.腎臓だけでなく肝臓や脾臓にも多発性の嚢胞を形成し,末期腎不全に進行する.小児期には無症候性で,多くは30歳以降に高血圧や尿検査異常を契機に診断される.嚢胞は徐々に増大・増加するため,小児期に単発性であっても本疾患を否定できない.高血圧や脳動脈瘤などの合併症が知られ,家族歴から本疾患が疑われる場合には慎重に経過観察する.嚢胞の増悪因子としてバソプレシン刺激