●病態
・腎盂尿管移行部の先天的通過障害のため,腎盂腎杯の拡張を呈する病態である.
内因性の病因としては,尿管の平滑筋形成不全および尿管の蠕動運動異常,尿管ポリープなど,外因性の病因として異常血管などによる圧排などがある.
・鑑別疾患としては,巨大腎杯症,巨大尿管症〔閉塞性巨大尿管症(尿管膀胱移行部狭窄症など),逆流性巨大尿管症(膀胱尿管逆流症,後部尿道弁など),非閉塞性非逆流性巨大尿管症〕などがあげられる.
・水腎症の重症度分類にはSFU(Society for Fetal Urology)分類が用いられる.
・新生児期の多くは無症候であり,最近では胎児超音波検査や新生児・乳児期の超音波スクリーニングで発見される症例が多い.症候性水腎症では,尿路感染・血尿・繰り返す嘔吐・ミルク摂取不良などの症状を呈する.大量の水分摂取や体位の変化によって通過障害の急激な増悪を認める間欠性水腎症では,嘔気・嘔吐などの消化器症状を伴う側腹部痛/背部痛を主訴とすることが多い.
●治療方針
経過観察による自然改善を期待する待機治療と,手術治療がある.小児の腎盂尿管移行部通過障害の成因は内因性狭窄が最も多く,成長に伴い自然軽快も期待できる.しかし高度水腎症では自然改善率は不良であり,経過観察中に急激な腎機能悪化をきたす可能性があるため,注意深い定期的評価を要する.
A.待機治療
新生児・幼児期に発見された水腎症で,無症候性で分腎機能低下がない場合,待機的治療となる.片側軽度水腎(SFU grade 1,2)の症例では,2歳までにほぼ全例自然改善すると報告されている.片側高度水腎症(grade 3,4)では経過観察中に増悪する割合は25~60%とされ,超音波検査・レノグラム検査による3~6か月ごとの定期的評価を要する.悪化の評価は,①超音波検査における水腎gradeの増悪や腎実質の菲薄化の進行,②レノグラムを用