小児の下部尿路異常は腎不全,難治性尿路感染,尿失禁をきたす可能性のある重大な病態である.器質的異常と機能的異常(神経因性膀胱)があり,それぞれの代表疾患である後部尿道弁と二分脊椎について概説する.
Ⅰ.後部尿道弁
●病態
・先天的に男児の尿道閉塞をきたす病態である.閉塞の程度はスペクトラムであるが,きわめて高度な閉塞では胎児期に羊水過少をきたし肺低形成を伴う.胎児エコーでは尿道の閉塞による膀胱と後部尿道の拡張(keyhole sign)を認め,膀胱内圧上昇に伴い2次的に膀胱尿管逆流(VUR)や水腎症を合併しやすい.胎児期・新生児期に両側の水腎水尿管症を認めるような症例では,新生児期・乳児期早期に治療を行っても腎機能・膀胱機能の低下をきたすことが少なくない.
・初期診断は排尿時膀胱尿道造影(VCUG)による尿道造影所見である.VCUGで後部尿道の拡張,膀胱頸部の肥厚,膜状物による尿道のスリット状陰影欠損が3主徴である.先天性尿道閉塞をきたすほかの疾患としてはprune Belly(プルーンベリー)症候群,前部尿道弁があるが,prune Belly症候群ではVCUGで膀胱頸部肥厚を認めず,前部尿道弁では後部尿道より遠位側の球部尿道の拡張を認める.乳児期以降は難治性尿路感染・VURを契機に見つかることが多い.男児の高度VURでは必ず後部尿道弁を鑑別しなければならず,斜位での排尿時撮影が重要である.尿道内視鏡では精阜に連続する全周性の膜状狭窄として認められる.
●治療方針
胎児エコーや乳児期のVCUGで後部尿道弁を疑った場合は,早期に小児泌尿器専門医に紹介する.水腎水尿管症やVURを合併している場合は,抗菌薬の予防投与を新生児期より行う.初期管理の基本は内視鏡下弁切開による閉塞解除である.尿道に内視鏡が挿入困難な場合や,腎機能低下が著明ですみやかな尿ドレナージを期待する場合は,膀胱皮膚瘻作