Ⅰ.小陰茎
●病態
・陰茎の構造異常はないが,サイズが小さく年齢を経ても改善しない状態.
・伸展陰茎長が-2.5SD未満,思春期では-2SD未満の陰茎長で評価する.
・日本人では新生児期で2.4cm未満,6か月時で2.6cm未満,1歳6か月時で2.8cm未満,3歳時で3.0cm未満が目安となる.
・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症によるアンドロゲン合成障害に起因することが多い.
・染色体異常〔Down(ダウン)症候群,Kallman(カルマン)症候群,Klinefelter(クラインフェルター)症候群など〕の合併が多い.
・小陰茎と埋没陰茎の鑑別が重要である.
●治療方針
陰茎の適切な測定が重要.伸展陰茎長は,非勃起時に陰茎を十分に伸展させた状態で恥骨結合から包皮先端ではない亀頭先端まで陰茎背面の距離を測定する.
小陰茎が疑われる場合,その原因検索として以下の検査を考慮する.染色体検査,テストステロン,LH,FSHの基礎値,そのうえで必要あればAMH測定,GnRH試験,hCG試験,副腎系の検査(17-OHP,コルチゾール,ACTHなど).
染色体異常の有無により検査方針を立てる.
A.小陰茎の場合
1~2歳頃を目標に(遅れて判明した場合はそのときより)男性ホルモン投与を施行する.
Px処方例
エナルモンデポー注 1回25mg 月1回 筋注 2~3回
B.小陰茎でない場合
埋没陰茎や他の要因による陰茎が小さく見える病態の改善を2~3歳以降に考慮する.
■患児・家族説明のポイント
・小陰茎と診断され,その原因疾患が判明した場合は両親への説明・治療とともに,将来の本人への情報提示を含めた方針を説明する必要がある.
・新生児期に診断されず家族が気にしてくる場合小陰茎でないことも多く,陰茎サイズの適切な評価とともに,10歳頃までは陰茎長は年間1.5~2mm程度しか大きくならず,二次性徴以降に急激に大きくなるまでは