診療支援
治療

停留精巣,陰嚢水腫
undescended testis,hydrocele
浅沼 宏
(慶應義塾大学泌尿器科学・准教授)

Ⅰ.停留精巣

●病態

・精巣が胎生期の下降経路の途中で停留し陰嚢内に降りていない状態をいう.発生率は男児の2~5%とされ,低出生体重児や早期産児では高頻度となる.

・生後6か月までは自然下降が期待できる一方,放置すると幼児期以降は組織変化をきたし,将来的には不妊症,悪性腫瘍などのリスクが生じる.

●治療方針

 触診で鼠径部に触知可能か否かを判別する.非触知精巣には腹腔内精巣,胎生期の血流障害に伴う消失精巣などが含まれる.生後6か月までは経過観察とし,自然下降がなければ1歳6か月頃までに精巣固定術を施行する.

A.触知精巣

 鼠径部に触知可能な停留精巣は,鼠径部切開でアプローチして精巣を陰嚢内に形成した皮下ポケット内に縫合固定する.

B.非触知精巣

 両側ともに非触知精巣の場合は,hCG刺激試験などで精巣組織の存否を評価する.腹腔内精巣が強く疑われる場合は腹腔鏡検査を行い,そのまま鏡視下に精巣固定術を行う.精巣血管が短い場合は精巣血管を離断し,側副血行路の発達を待って6か月後に精巣を陰嚢内に固定する2期的Fowler-Stephens手術が行われる.

 片側非触知精巣など消失精巣が疑われる場合は,鼠径部または陰嚢部切開でアプローチし,遺残組織は摘除する.

Ⅱ.陰嚢水腫

●病態

・胎生期に腹腔内から陰嚢内へと連続する腹膜鞘状突起は,通常生後1歳頃までにはその内腔が閉鎖し交通がなくなるが,交通が残存し腹水が陰嚢内に貯留する状態をいう(開存腔が大きく腹腔内臓器が陰嚢内に落ち込む状態が鼠径ヘルニアである).

・腹膜鞘状突起の閉鎖部位によっては精索水腫となる.また,精巣腫瘍の10~20%には陰嚢水腫が合併するとされている.

●治療方針

 無痛性陰嚢腫大で気づかれることがほとんどである.ペンライトを当て透光性の有無で陰嚢水腫の存在は確認できるが,精巣腫瘍など他の陰嚢内疾患を評価するためにも超音波検査は必須である.また水

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