Ⅰ.停留精巣
●病態
・精巣が胎生期の下降経路の途中で停留し陰嚢内に降りていない状態をいう.発生率は男児の2~5%とされ,低出生体重児や早期産児では高頻度となる.
・生後6か月までは自然下降が期待できる一方,放置すると幼児期以降は組織変化をきたし,将来的には不妊症,悪性腫瘍などのリスクが生じる.
●治療方針
触診で鼠径部に触知可能か否かを判別する.非触知精巣には腹腔内精巣,胎生期の血流障害に伴う消失精巣などが含まれる.生後6か月までは経過観察とし,自然下降がなければ1歳6か月頃までに精巣固定術を施行する.
A.触知精巣
鼠径部に触知可能な停留精巣は,鼠径部切開でアプローチして精巣を陰嚢内に形成した皮下ポケット内に縫合固定する.
B.非触知精巣
両側ともに非触知精巣の場合は,hCG刺激試験などで精巣組織の存否を評価する.腹腔内精巣が強く疑われる場合は腹腔鏡検査を行い,そのまま鏡視下に精巣固定術を行う.精