診療支援
治療

月経の人工移動
medical control of menstrual cycle
中村康彦
(山口県立総合医療センター・副院長)

●病態

・月経とは,卵胞期・排卵期・黄体期の各期で卵巣から分泌される性ホルモン〔エストロゲン(E)単独→E+プロゲステロン(P)〕が子宮内膜に作用し,増殖期・分泌期を経た子宮内膜がEとPの同時低下により剥脱する現象である.一時的な月経期間の調節には,EとPの合剤(中用量ピル)を用いる.

●治療方針

 女性にとって最も体調がよいのは卵胞期であるから,可能なら旅行やスポーツの前に月経を終了することがベストである.対象は初経を迎えた女性であり,体格はすでに成人のそれに近く投与する薬剤も成人と同量でよい.現在日本で使用可能なピルは,ドーピングの対象ではなくトップアスリートでも安心して使用できる.

 排卵前であれば7~14日間の連日投与を行い,予定より早めに月経(消退出血)を誘発・終了させる.内服開始が排卵期に近いと,排卵抑制に失敗して本来の予定どおりの月経開始となる.排卵後であれば,次回予定月経の2~3日前より内服を開始し,月経が発来してもよい日まで継続投与して月経を遅らせる.

 5日以上の延長は破綻出血に陥る可能性があるので注意する.中用量ピルでは,内服終了後4~7日目から月経(消退出血)が始まるので,予定に合わせて服薬を中止する.

Px処方例

プラノバール配合錠(エチニルエストラジオール0.05mg+ノルゲストレル0.5mg) 1回1錠 1日1回 24時間ごとに内服

 5日以上の延長では1日2錠を要することもあるが,嘔気などの副作用も増える

■患児・家族説明のポイント

・ピル内服中の妊娠率は0.1%ときわめて少ないが,無月経が続く場合は早めに産婦人科を受診するように伝える.

・ピル内服で最も注意すべき副作用は静脈血栓塞栓症であり,肥満(BMI 30以上),喫煙,高血圧,心疾患を有する場合は注意を要する.

・また手術前にはピル休薬期間が必要であり,必ず主治医に内服を伝えておく.

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