診療支援
治療

妊娠
pregnancy
光田信明
(大阪母子医療センター・副院長)

 妊娠は生理的現象の1つであり,妊娠したとしても病的状態とはみなされないので自費診療となる.医療機関での健診も自費であり,分娩も自費である.妊婦健康診査(妊健)は疾病に対する検査ではなく,スクリーニングである.顕性の合併症が判明している(した)場合には,それぞれの専門科と連携診療する.

●治療方針

A.異常妊娠・分娩

 健康保険給付の対象である.妊娠初期性器出血であれば,流産,異所性妊娠,絨毛疾患が主な異常妊娠であり,妊娠中期以降ならば,切迫早産,前置胎盤,胎盤早期剥離があげられる.そのほか前期破水,妊娠高血圧症候群(HDP:hypertensive disorders of pregnancy),FGR(fetal growth restriction),羊水過多・過少など多数の異常妊娠が存在する.

 ハイ・ロウリスク妊娠は存在するが,正常・異常妊娠を妊娠中に区別することは事実上できない.妊娠は終了して初めて正常であったかどうか判断できるのであり,あらかじめトリアージすることはできない.そのために一般診療所に通院中の妊婦であっても,突然に母体搬送,新生児搬送となることはありうる.そこで一般救急とは別個に,総合・地域周産期母子医療センターへの搬送体制が構築されているのである.

B.医療と保健事業によって支援

 妊娠した場合,すべての妊婦は市町村に妊娠届を提出し,母子(健康)手帳を交付され妊婦健診を受けることになる.この妊婦健診は市町村から補助を受けることが可能であり,14回分で約10万円となる.分娩に際しては,出産育児一時金が42万円給付される.このうち医療機関を通して産科医療補償制度に1.6万円が支出される.この制度は,脳性麻痺のお子さんと家族を対象に3,000万円が支給される制度である.

C.福祉事業

 貧困対策として,各種疾病に対しては医療券が適用されるが,妊婦健診,出産に対しては児

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