診療支援
治療

熱性けいれん
febrile seizure
夏目 淳
(名古屋大学大学院障害児(者)医療学寄附講座・教授)

治療のポイント

・急性期は急性脳症・脳炎,髄膜炎の鑑別が重要である.

・発作が5分以上持続している場合,薬剤投与を考慮すべきである.

・多くの患児は予後良好であり,家族の不安を取り除くことが重要である.

・熱性けいれんが遷延した場合,または再発し今後も再発の可能性が高いと考えられる場合は,発熱時のジアゼパム予防投与を行う.

●病態

・熱性けいれんは主に生後6~60か月に起こる,38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性,非けいれん性を含む)であり,中枢神経感染症,先天代謝異常など直接の発作の原因がみられるものは除外される.

・熱性けいれんの発症機序には,脳の未熟性,誘因となる発熱,遺伝的素因がかかわっていると考えられる.

・熱性けいれんのうち,①焦点発作(部分発作)の要素,②15分以上持続する発作,③一発熱機会の,通常は24時間以内に複数回反復する発作のうち,1つ以上をもつものを複雑型熱性けいれんとよび,いずれも該当しないものを単純型熱性けいれんとよぶ.

・長時間持続する発作または複数の発作で,その間に意識が回復しないものを熱性けいれん重積状態とよぶ.以前は持続時間の定義は30分以上とされることが多かった.これは動物実験で長時間の発作により脳障害が起こるとの報告から,ヒトにおいても脳障害を起こしうる発作として定義された.ただし最近は持続時間の定義を短くし,治療開始基準とする実地用定義が推奨されている.

・「熱性けいれん診療ガイドライン2015」においても,発作が5分以上持続している場合を薬剤治療の開始を考慮すべき熱性けいれん重積状態の実地用定義としている.

●治療方針

 熱性けいれんの診断は発作の原因となる疾患の鑑別からなる.初めての有熱時発作では,急性脳炎・脳症,細菌性髄膜炎を鑑別することが重要である.

A.救急治療薬

 けいれん発作の第1選択としてはジアゼパムまたはミダゾラムの静注が用いられる.

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