診療支援
治療

脳性麻痺
cerebral palsy
荒井 洋
(ボバース記念病院小児神経科・院長(大阪))

治療のポイント

・さまざまな病態を含む疾患群であるため,個々の病態に合わせた介入プログラムを念頭におく.

・運動だけでなく認知,コミュニケーション,行動,情動など発達全体に及ぶ障害に包括的にかかわる必要がある.

・家族を含めたQOLの改善,発達全体の向上,長期的な二次障害の予防が目標である.

・他科,他職種および教育,福祉関係者と共同して介入方針をまとめる姿勢が大切で,チーム医療が欠かせない.

・定期的・客観的評価を基に年齢や発達段階に応じた介入が必要である.

●病態

・脳性麻痺は複数の病態を含む疾患群であり,米国脳性麻痺・発達医学会では「発達期の胎児または乳児の脳に生じた非進行性の病変による運動と姿勢の発達の永続的で活動を妨げるような障害の一群を指す.脳性麻痺の運動障害はしばしば感覚,知覚,認知,コミュニケーション,行動の障害およびてんかん,二次的な筋骨格の問題を伴う」と定義されている.

・わが国の定義では発症が胎児期から新生児期までのものに限定される.早産児が多く,原因としては脳室周囲白質軟化症(PVL:periventricular leukomalacia)が最も多い.

●治療方針

 治療目標は,機能の向上(介助量の軽減)だけでなく,発達の向上,家族も含めた将来にわたるQOLの改善(身体機能・構造,活動,参加の向上)である.正確な早期診断と分類(病態分析)を行い,家族・本人の障害受容を助け,運動だけでなく全体的な発達を評価して,将来像を見据えた包括的な介入プログラムの立案を行う.

 病態は,周産期歴および麻痺型,機能レベル(粗大運動,上肢操作,コミュニケーション,摂食),脳画像所見,合併症状によって分類される.個々の病態の障害スペクトラムに合わせた介入を,成長・発達段階,環境(就学,卒業など)に応じて提供する.介入に際しては,他科医師,療法士,心理士,看護師,保健師,保育士・教師,福祉関

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?