診療支援
治療

小児交互性片麻痺
alternating hemiplegia of childhood
佐々木征行
(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科・部長)

●病態

・一過性片麻痺のエピソードを反復する疾患で,非常にまれである.以下の特徴をもつ.

 a)18か月以前に発症

 b)左右不定の反復する弛緩性(時に強直性)片麻痺が特徴で,対側に移ったり全身麻痺になったりすることもある

 c)突発する異常眼球運動(眼振,左右で異なる眼転位),四肢や体幹の強直やジストニア,自律神経症状を呈す

 d)上記b)c)の症状は睡眠で消失

 e)筋緊張低下や精神運動発達遅滞を伴うことが多い

・片麻痺発作は数分~数日間続き,覚醒後しばらくは麻痺が改善している傾向がある.呼吸筋麻痺による呼吸停止や,けいれん重積を認めることもある.

・Na/K-ATPase α3サブユニットをコードするATP1A3遺伝子の新生突然変異が原因である.特にp.E815K変異の場合には,呼吸停止やけいれん重積をきたしやすい.

●治療方針

 発作時と発作間歇時に分ける.

A.発作時の治療

1.けいれん重積

 一般的なけいれん重積に準じる.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊セルシン注 1回0.3mg/kg 静注

➋ラボナール注 1回2mg/kg 静注

2.呼吸停止時

 アンビューバッグによる換気補助,気管挿管,重症例では人工呼吸器管理を行う.同時に入眠作用のあるセルシン静注,ラボナール静注,エスクレ坐剤,ダイアップ坐剤などを使用して入眠をはかる.

 あらかじめアンビューバッグを自宅に用意し,普段から必要時に使用できるよう家族に指導する.

3.片麻痺時の治療

 入眠を目標とした治療となる.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊エスクレ坐剤 1回30mg/kg

➋ダイアップ坐剤 1回0.5mg/kg

B.発作間欠時の治療

1.片麻痺発作の予防

 塩酸フルナリジンの有効性が報告されたが,現在国内では製造販売がなされていない.ベンゾジアゼピン系やダイアモックスの有効性の報告もある.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

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