診療支援
治療

顔面神経麻痺
facial nerve palsy
川脇 壽
(大阪市立総合医療センター小児神経内科・部長)

●病態

・顔面神経麻痺をきたす原因は多彩で,特発性,先天性,炎症性,外傷性,腫瘍性などに分けられるが,特発性〔Bell(ベル)麻痺〕が最も多い.先天性,耳炎性(急性中耳炎)は2歳以下での発症が多く,Ramsay-Hunt(ラムゼイ・ハント)症候群は学童期以降に多い.

・Ramsay-Hunt症候群では,顔面神経膝神経節などに潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化し,片側の耳介,外耳道に痛みを伴う水疱(帯状疱疹)が生じ,第Ⅷ脳神経症状である耳鳴り・難聴・めまいを伴う.Bell麻痺では単純ヘルペスウイルス1型との関連(再活性化)が強く示唆されている.

・顔面神経麻痺に遅れて水疱形成する場合や,VZVで発症しても耳介帯状疱疹や難聴・めまいを伴わない(無帯状疱疹性ヘルペス)場合があり,Bell麻痺と鑑別が困難なことがある.

●治療方針

 Bell麻痺においてはステロイド療法が推奨されている.作用機序については神経浮腫とそれに伴う神経内圧の軽減および二次的に得られる血流改善が推測されている.成人では中等度以上のBell麻痺に対しては発症早期(発症後3日以内が望ましいが遅くとも10日以内)に抗ウイルス薬をステロイドと併用で投与することが推奨されている.

 小児においても成人に準じて治療が行われていることが多いが,予後良好で完全回復する例が多く,これらの有用性に対する十分なエビデンスは得られていない.軽症例,特に乳幼児では無治療にて経過観察されることも少なくない.

 Ramsay-Hunt症候群においては,Bell麻痺に比べて重症であり後遺症を残しやすいことからステロイド,抗ウイルス薬による早期の治療開始が重要である.

 急性中耳炎や乳突洞炎による顔面神経麻痺では,抗菌薬投与や鼓膜切開など耳鼻科的処置が必要である.外傷に伴う顔面神経麻痺では,副腎皮質ホルモンのほか,顔面神経減荷術を含

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