●病態
・脊髄髄膜瘤は神経外胚葉と内胚葉の未分離により発生する.発生部位は腰仙髄が最も多い.病変部以下の運動感覚障害と膀胱直腸機能障害を生じる.
・病変部からの髄液漏出により脊髄腔圧が低くなり,小脳扁桃・脳幹部が大後頭孔から脊椎管内に下垂してChiari(キアリ)奇形2型が発生する.無呼吸発作・嚥下障害など脳幹機能障害を生じ,乳幼児期の生命予後に影響する.
・胎児期からの髄液漏出によるくも膜下腔形成不全,Chiari奇形2型による大後頭孔狭窄のため水頭症を生じる.精神運動発達,内分泌機能障害,視機能障害の原因となる.
●治療方針
A.出生後管理
腹臥位とし腰仙部を挙上する〔Matson(マトソン)体位〕.生理食塩液を浸した清潔なガーゼで病変部を覆い感染予防とする.全身的に広域スペクトラムの抗菌薬を投与する.可能であれば,術前にMRI,CTを撮影し,病変部および合併病態の評価を行う.
B.外科治療
1.脊髄髄膜瘤
出生後24~48時間以内に脊髄髄膜瘤修復術を施行する.手顕微鏡下に神経組織の剥離・脊髄形成を行い,硬膜を剥離・縫合する.皮膚を正中線上で密に縫合閉鎖する.皮膚縫合にあたっては形成外科と共同して行う.
2.水頭症(約80%)
修復術後に仰臥位とし,大泉門側方に髄液リザーバーを設置する.手術時に10~30mLの髄液を吸引除去する.術後は1~2日ごとに27G翼状針を用いてリザーバーから髄液吸引除去する.背部の創治癒に問題なく,髄液感染がないことを確認後,脳室腹腔短絡術(VPシャント)を施行する.通常は生後2~3週時点で行う.圧可変式のシャントバルブを使用する.
3.Chiari奇形2型(約10%)
内科的治療抵抗性の呼吸・循環障害を呈する場合,時期を失せず上位頸椎拡大減圧術と硬膜形成術を行う.生後1~3か月時点で行うことが多い.
C.長期予後
1.脊髄係留症候群(20~30%)
修復術後の癒着