A.対応のポイント
発達障害の初期対応として,家族が発達障害について肯定的に理解することが最も重要である.
B.発達障害の概念ととらえ方
1.誤解されやすい発達障害
発達障害とは発達特性のために社会のなかで生きにくい状態を指す概念であるが,用語としては発達の停止や将来の否定という否定的なニュアンスが伝わってしまい,家族にとっては受け入れにくいものである.
2.概念の背景
国際生活機能分類(ICF)では,障害を医学モデル(障害を個人に生じた生物学的な問題ととらえ,生物学的な診断を基に専門職が治療として対処)と社会モデル(障害は社会・環境が作った問題であり,社会・環境が枠組みの変革により対応)でとらえている.発達障害者支援法(2005年4月1日施行)で定める発達障害は,ICFの2つの障害モデルを導入した概念である.保護者に発達障害について肯定的な受け止め方をしてもらうためには,社会モデルとしての発達障害の説明が不可欠である.
3.発達障害の肯定的な説明
社会モデルとしての障害理解には,多数派向けに設計された社会で少数派が生きにくいという説明が最もわかりやすい.子どもの特性や存在自体が障害ではなく,発達特性が少数派であるために,多数派向けの枠組み(制度や常識)で感じる生きにくさを障害とする考え方である.発達障害ではなく「発達的少数派」という用語は家族にとって受け入れやすい.
発達障害の診断は生きにくさの証明であり,発達障害のある子どもを守るための支援の必要性の根拠である.
C.診断方針
診断へのプロセスについて解説する.
1.本人あるいは家族と教員・保育士の困り感の確認
主訴の確認は,患者家族に満足のいく診療するうえで最重要な課題である.家族の発達障害についての認識とニーズを確認することで,より的確な説明が可能になる.
2.困り感の原因となる症状や行動上の課題の確認(チェックリストが有効)
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