診療支援
治療

学習障害
learning disorders(LD)
若宮英司
(藍野大学医療保健学部・特任教授)

●病態

・知的水準の低下,視聴覚障害,精神神経疾患,心理社会的逆境,不適切な教育によるものではない,6か月以上継続する学習困難で,a)~f)の6つの臨床特徴のうち1つ以上を呈するものとされる.

 a)不正確または速度が遅く,努力を要する読字:発達性ディスレクシア

 b)読んでいるものの意味理解困難

 c)綴り字の困難さ:日本語では綴り字ではなく仮名文字,漢字の書字困難と考える

 d)書字表出の困難さ:文法的誤りや表現,文脈のまとめ方の拙劣さによる文章表現の問題

 e)数概念,数的事実,計算手続きの困難さ:発達性ディスカリキュリア

 f)数学的推論の困難さ

・e)の数的事実とは,1桁同士の加減算や九九レベルの乗算のような主に記憶による簡単な計算を指し,計算手続きとは,より複雑な筆算など手順や方略を含む計算を指す.

・実際には学習技能の習熟に,知的水準のほか,注意集中力や言語発達などが影響し,文字形態には注意集中や協調運動(上肢の巧緻性)が関与するので,学習障害以外の発達の問題点の併存にも注目する.知能検査と学習技能検査を施行し,客観的指標で判断する.

●治療方針

 視力・聴力の低下が疑われる場合,眼科,耳鼻科を紹介する.

 診断を告げるだけでなく,学習困難の原因である特異的障害を説明し,家族と本人に問題点の適切な理解を促す.病態は成人後も続き,生活技能を支障することを理解させる.

 そのうえで例えば漢字学習では書字よりも読みと意味理解を優先させるなど,個人の状況に応じた学習到達目標について相談する.やみくもな繰り返し練習による弊害を避け,学習意欲を回復させるように努める.

 学習障害の対応は,障害されている学習技能の訓練と合理的配慮の2つである.

A.障害されている学習技能の訓練

 比較的均質な発達性ディスレクシア以外の学習障害では,同じ学習技能の障害でも原因となる認知障害はさまざまで,個々にその同定が必要

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