治療のポイント
・一見特徴が弱くても,深刻な二次的問題を生じる可能性があることを念頭におく.
・本人への心理社会的対応,保護者への心理社会的対応,関連領域との連携を主軸に据える.
・本人への対応では,視覚的構造化によって発達促進と二次的問題予防の両立をはかる.
・保護者への対応では,ペアレントトレーニングなども活用する.
・薬物療法は,付随して生じることのある易刺激性への対症療法が中心となる.
●病態
・自閉スペクトラム症(ASD)のうち,知的能力障害のない(高機能;high-functioning)タイプおよび言語的コミュニケーションに異常のないタイプ(アスペルガー障害)について述べる.
・特徴をまとめると以下のようになる.
a)社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的な欠陥がある
・ある程度の対人関係はとれるものの,相互的,共感的な関係が成立しにくい
・表情,身振り,視線などを用いた非言語的コミュニケーションの理解と表出が苦手
・人間関係を発展させ,維持することへの関心が乏しいか,あってもうまくできない
b)行動,興味,活動の限局された反復的な様式(以下の少なくとも2つ)がみられる
・常同的または反復的な身体の動き,物の使用,または発言がみられる
・同一性への固執,習慣への頑ななこだわり,言語/非言語的な儀式的行動がみられる
・興味が狭く偏り執着し,その強さや対象が通常あまりみられない程度である
・感覚刺激への過敏さまたは鈍感さ,または環境の感覚的側面への強い興味がみられる
c)これらの特徴は乳幼児期からみられ,成人期も何らかの形で存在するが,幼児期は異常さが目立たないこともある.また年齢とともに自分なりの処世術を身につけることがあるため,思春期~成人期になると他者からは異常が見えにくくなることもある
d)症状は社会的,職業的,ほかの重要な領域で臨床的に意味のある障害を引き