診療支援
治療

発達障害の思春期問題
problems in adolescents with neurodevelopmental disorders
小栗正幸
(特別支援教育ネット・代表)

 発達障害がある支援対象者への対応,なかでも思春期に外在化する二次障害への対応は,優れて教育的であることが治療的な対応であることと,ほぼ同義語の関係をなしている.ここでは,そうした状態の典型例である「反抗挑発症」への対応を中心に,支援困難な病態への教育的介入法を紹介する.

●病態

・この病態は,支援対象者の怒りが,周囲に著しい不快感を与えるものである.右といえば左と答える極度な天邪鬼,自分には悪いところはなく悪いのはすべて他者だという一方的な他者批判,それに伴う悪口雑言の数々.その「悪態」には,周囲からの不適切な対応(体罰など)を招きかねないものがある.

●治療方針

A.悪口雑言(悪態)への教育的介入

 悪口雑言に対しては「そんなことをいうべきではない」という真正面からの説諭ではなく,例えば「また心にもないことを」と支援対象者の不適切な言動の的を(肯定的に)外すようにする.そうすると真正面からの対応より,指導場面の硬直化を予防できる可能性が高まる.

 支援対象者がさらに挑発的な発言を続けるときは,例えば「きみもいよいよ思春期だね.考えてみれば僕も若い頃はそうだったよ」といった具合に的を外す.要するに,支援対象者が憎まれ口をたたくのではなく「ニヤリ」とできる状況を演出することが,症状緩和につながる.

B.日常場面での教育的介入

 反抗挑発的な言動が表出していないときに,支援対象者には簡単な用務を意図的に依頼する.例えば「そこに落ちているゴミをゴミ箱へ捨ててください」という程度の用務である.そうすると支援対象者は「面倒くさい」といいながらでも,指示に従ってくれる可能性がある.そこで「ありがとう」と答礼し,さらに「きみのように手伝ってくれる人はいない」ともち上げれば,「ほかに手伝う仕事はないの?」といい始める可能性が出てくる.

 この介入法は,指示に従う練習や信頼関係の練習,さらにコミュニケーショ

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