●病態
・わが国の20歳以下の自殺(既遂)率は,10万人あたり1.5~2.5人(年間約600人)である.内訳は小学生約9人,中学生約75人,高校生約220人,それ以外の未成年約300人である.この現実を重く受け止めることが重要である.理由は予防が可能であるからである.
・自殺企図につながる質問項目の中学生における年間症状保有率は,「死んだほうが楽と思う(◎2~4%,〇6~8%),死にたくなる(◎2~3%,〇5~6%),実際,死のうとした(◎0.8~1%,〇2%)」であった(◎印:強く思う,〇印:時々あった).この現実も重く受け止めることが重要である.理由は対応可能だからである.
●治療方針
自殺の治療は予防しかない.しかし予防効率は悪い.理由は誰しも「死」について考える.しかし自殺について考える青年はそのうちの10人に1人,そのうちの10人に1人が自殺を企図し,そのうちの10人に1人が自殺未遂となり,そのうちの10人に1人が既遂者になるとされる.
予防焦点をどこにあてるかが難しい.また自殺既遂者は10代から自殺未遂を重ね,繰り返しているうちに既遂となる.したがって10代の自殺予防は,のちの自殺予防にもつながる大事な対応策である.
A.予防法
既遂児の傾向としては,学校的背景の進路問題,不登校(傾向を含む)など,家庭的背景の保護者との不和,個人的背景は精神科治療歴,性格特性(未熟依存的,衝動的,白黒はっきりの二者択一的),自殺のほのめかしなどが指摘されている.その徴候については周りに気づかれてはいたが,積極的予防策に及ばず,既遂となった例が多くみられる.したがって積極的予防が大事となる.
自殺企図につながる上記3質問項目との関連では,既遂児とは異なる.学校で気づかれている問題としては,家族の人間関係の希薄さ,不安・自信のない性格特性,うつ状態,乏しい行動・実行力,優柔不断で自己決定に