診療支援
治療

薬物乱用
substance abuse
宮口幸治
(立命館大学大学院人間科学研究科・教授)

治療のポイント

・予防が最も大切なので患児の初期サインに注意を払う.

・身近な友人から入手することが多く,交友関係にも留意する.

・治療には薬物療法と心理療法を併用する.

・「乱用ダメ」でなく「なぜダメか」「なぜ乱用に至ったか」を一緒に考える.

・支援にあたっては患児の知的能力を考慮する.

・家族だけで抱え込まず地域資源と連携する.

●病態

・薬物乱用は,法律や社会規範から逸脱した目的や方法で,薬物依存症(耐性,離脱など)に至らない程度に使用することをいう.医薬品の乱用(酩酊や多量服薬など)も含まれる.

・主な薬物として,アヘン類(ヘロイン,モルヒネ塩酸塩),大麻類(マリファナ,ハシッシュ),鎮静剤または催眠剤,コカイン,カフェイン,アンフェタミン(覚せい剤),幻覚剤(LSD),メスカリン(MDMA),揮発性溶剤(トルエン)などがある.

・近年,中・高校生で薬物に対する抵抗感が薄れ,社会問題化している.女子少年院在院者の場合,覚せい剤取締法の罪名が,年少少年(中学生相当)で1割,中間少年(高校生相当)で2割強,年長少年(高卒相当)で約4割を占めている.

・遊び友達,昔の同級生など身近な人から勧められ断りきれず,いつの間にか薬物乱用を繰り返すといったケースがよくみられる.

●治療方針

 1回の使用でも乱用となる.乱用が進むと,薬物依存,薬物中毒,離脱,薬物精神病に至る.急性中毒になり死亡することもある.また薬物を手に入れるために不良友人との交際,窃盗・密売,学業不振にもつながる.

 そのため患児における治療目的は,断薬と再使用防止であり,急性中毒や精神・身体障害,離脱症状,薬物依存を生じさせないことのほかに,薬物乱用に至った背景(家族の問題や交友関係の問題)への心理社会的な治療や教育が重要になってくる.

A.薬物乱用により幻覚妄想や精神運動興奮などの精神病症状がみられる場合

 覚せい剤などの乱用によって幻覚

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