診療支援
治療

喫煙
smoking
桝屋二郎
(東京医科大学大学院精神医学・准教授)

●病態

・タバコによる小児への影響という視点では,副流煙や妊娠中の母親の喫煙といった受動喫煙の問題も大きく,従来より小児へのさまざまな悪影響が指摘されているが,本項においてはテーマを小児自身の喫煙に絞る.

・わが国では未成年の喫煙は「未成年者喫煙禁止法」によって禁止されているため,一般的に未成年の喫煙は非行の一種とみなされることが多い.わが国においては,喫煙の危険性についての広報活動などによって成人の喫煙率が減少していることと同様,未成年の喫煙率も減少を続けている.

・しかし未成年の喫煙が根絶されたわけではなく,大井田らによる厚生労働科学研究によると2014年調査では喫煙頻度では喫煙経験のある中学生男子5.6%,中学生女子3.8%で,現在の喫煙状況は中学生男子で「30日間で1日でも喫煙」1.3%,毎日喫煙0.3%,中学生女子で「30日間で1日でも喫煙」0.5%,毎日喫煙0.1%となっている.

・タバコには600種類以上の内容成分や添加物が含まれていることが報告されている.そのなかには小児の心身に悪影響を及ぼすものも多いが,特に有害性を指摘されることが多いのが,ニコチン,タール,一酸化炭素である.これらは悪性腫瘍,心血管系疾患,呼吸器疾患,脳血管障害,歯周病などのさまざまな疾患の危険因子となっており,有病率や死亡率の上昇を引き起こしていることが知られている.また小児においては発育・発達の遅延が生じることも知られている.

・これらの問題に拍車をかけるのが,タバコの依存性の強さで,それはニコチンの依存性に依っている.ニコチンは神経興奮作用を有しており,人に快楽感覚を与える脳内報酬系を刺激することで爽快感や気分高揚といった快楽を感じさせて依存性を獲得する.摂取後の脱感作作用も強く,喫煙を始めると脱感作によって再度の喫煙での快楽が得にくくなるため,同等の快楽を求めて喫煙量が増えるという耐性現象

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