診療支援
治療

飲酒
alcohol use disorders
定本ゆきこ
(京都少年鑑別所・医務課長)

A.概観

 わが国では子どもにおける飲酒の問題は昔に比べてかなり減っている.2000年に,未成年者に酒類を販売供与した場合は多額の罰金が科せられるなど,法律(未成年者飲酒禁止法)の改正がなされたことが最大の原因である.20年前は10代のアルコール依存者をときどき見かけたが,現在そのようなことはまれである.高校の修学旅行や部活の打ち上げでの飲酒が不思議ではなかった時代があったが,国をあげてのアルコール対策の結果,飲酒経験のある未成年の数は減り,中学3年生で9%,高校3年生で20%あまりである(2008年,厚生労働省).

 物質使用障害になるには一定期間使用し続けることが条件である.したがって10代の飲酒に関しては,いまだ深刻な事態になっていない間にアルコールが心身に及ぼす影響や将来予測される問題を本人と家族に伝え,リスクを予防すること,また飲酒にかかわるほかの問題にも目を向けながら介入していくことが重要である.

B.病態と関連する問題,背景

 青少年が,急性アルコール中毒で救急搬送されることがある.飲酒経験が少なく酵素の活性が低い者が短時間に飲み過ぎると,血液中や脳内のアルコール濃度が急激に高まって危険な状態になりかねない.このような大量飲酒,また頻回飲酒の者が問題飲酒群とよばれ,アルコール使用障害(依存症)の予備軍となる.

 法律改正以降,未成年者が飲食店や販売店で酒類を手にすることが難しくなったので,飲酒する場所は家庭であることが多い.自宅にいつでも酒類が置いてあり簡単に飲むことができる,親が子どもの飲酒に対して寛容であるというような環境背景があることが多い.

 親や家族に使用障害,さらに子どもに対する虐待・ネグレクトがある場合がある.家庭内に常に高い緊張状態が存在しており,そのため子どもがより飲酒行動に向かっているかもしれない.子どもの問題飲酒の背景には,家庭内の複雑な問題が存在し

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