診療支援
治療

吃音症
stuttering
菊池良和
(九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科)

●病態

・発話時に連発,伸発,難発が生じ,流暢に話すことを障害される言語障害.発達障害者支援法に含まれる.

・2~5歳に5%の発症率で,自然回復が多く,小学生以降は1%と減少する.

・一緒に声を合わせていうと吃音は消失する特徴がある(内的タイミング障害).

・病因は体質的要因が7~8割で,大脳基底核障害と左半球機能不全があり,右半球で代償反応が示されている(ドーパミン過剰説).以前の病因は,真似や家庭環境といわれていたが否定されている.

●治療方針

 タイミング障害のため,診察の簡単な会話では約4割の小児は吃音がわからない.そのため過小評価してはならない.(強く)勧める治療の推奨グレードはない.また薬物療法もない.思春期まで続くと半数以上が社交不安障害を合併するため,2次障害の予防が大事である.

A.吃音に対するからかい,いじめ

 5歳以上であれば「なんで,そんな話し方するの?」と周囲から指摘,真似,笑いを受けていないか,患児に直接聞くことが望ましい.されていれば園や学校の先生に伝え,解決策を話し合ってもらう.

B.吃音症状の軽減

 一緒に声を合わせる方法で流暢性を向上することができる.ただ症状の波があるため,訓練しなくても時間が経つと,ある程度までは軽減する.

C.面接に対する診断書

 「障害者差別解消法」の対象疾患のため,英検・中学高校大学入試の面接の合理的配慮を望む診断書は有効である.

■患児・家族説明のポイント

・「軽い吃音」「ゆっくりいえばよい」は,いわれても嬉しくない説明である.

・母親の育児姿勢が原因ではないことを説明する.「子どもの吃音 ママ応援BOOK」(学苑社,2016)がイラスト付きで母親の理解と支援に役立つ.

・発症後,3年で男児は6割,女児は8割が自然回復する.家族歴,性別以外には,自然回復する要因はわかっていない.

・年長以降の相談は,吃音が持続する前提で話をする.小学生ではから

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